昭和の歴史を記憶する日本家屋
戦災を免れた幸運が、迷路のような細い路地と古い木造家屋を現在まで息づかせてきた文京区根津。目的地を決めずにぶらぶら散歩するには格好の界隈です。
レトロ建築ファンに長く愛されてきた昭和初期の建築「曙ハウス」は昨年ついに老朽化に耐えきれず取り壊されてしまいましたが、それでもなお、不忍通りをぶらぶらと歩いて、気が向いたところで一本裏の細道に入り込めば、昭和の生活の匂いが染みついた家々が建ち並んでいます。
今回ご案内するのは、散歩途中のコーヒー休憩所としてふさわしい「千駄木露地」。お昼どきは界隈の人々でにぎわいますが、午後2時を回れば本来の落ちついた情緒が漂い、根津散歩の記憶をゆっくり反芻させてくれます。
古材が落ち着きとぬくもりを醸しているこの店舗は、築80年になるという日本家屋を2軒つなげて改装した合計30坪の和モダン空間。往年のままに残された天井の木の梁や碍子(がいし)が、昭和の時代を生きた庶民の日々の生活を記憶しているのです。
オーナーは下町育ちの幸島慎さん。次のページで、店内について詳しくご紹介しましょう。