この空間で交わされる会話こそ、最高の楽しみ
CARMA38のオーナーは、ギグルカフェで3年間働いたあと独立した鈴木典章さん(写真上・中央)。鈴木さんの経歴にはちょっとした回り道があります。最初から飲食業に進む決意をしていながら、その準備として、まずは洋服の販売ショップに就職。ショップ店員として、訪れる女性客の応対をして3年間を過ごしました。
「女性のお客さまがどう考え、何を望んでいるのか知りたくて」
その職場で鈴木さんはたくさんの得難い体験を重ねたようです。
カフェの扉を開けて入ってくる人々は、スタッフがなんの努力もしなくても、少なくともコーヒー1杯分の代金は支払ってくれる。でも、洋服のショップを訪れる女性たちは、気に入らなければなにひとつ購入することなく立ち去ってしまう。
当然、ショップで働く人々はどうすれば購入していただけるかについて真剣な試行錯誤を重ねなくてはならず、接客能力が鍛えられることになる……鈴木さんのそんな興味深いお話に聞き入ってしまいました。
「だからカフェで働くスタッフは、一度でも直接お客さまにモノを販売する仕事に就いて、お金をいただくことに対するシビアさを身につけたほうがいいのではないかと感じています」
カフェを訪れるときの気分によって、お店のスタッフと会話を交わしたい日もあれば、放っておいてほしい日もありますよね。そんな微妙な空気を読みとるのも、鈴木さんが販売員の経験から身につけ、大切にしていることのひとつです。
「でも僕自身にとっては、カフェの最高の楽しみは、さまざまな人たちに出会って会話を交わすこと。店をオープンするにあたって三軒茶屋を選んだのは、この街に魅力的な人々が住んでいるということも大きな要素です」
CARMA38がにぎやかになるのは夜遅い時間から。お客さまは界隈に住む30代以上の人々が大半。アーティスト、CM音楽関係者、シナリオライターなど、クリエイター系の人々が多く、なごやか空気の中で面白い会話が交わされているのだそう。