天国のオープンテラスで、都心の喧噪を忘れる
帝国ホテルの向こうに道路を隔ててひろがる日比谷公園。1903年(明治36年)に日本初の洋風の都市公園として建設されたこの場所は、豊かな緑と薔薇の花を中心とした四季おりおりの花壇が銀座界隈の貴重なオアシスとして広く愛されてきました。公園内には日比谷公会堂や大音楽堂など、コンサートやイベントでお世話になる施設が並びます。三角形の古びた建物は日比谷図書館。閲覧室も地階の軽食堂もなかなか趣があり、個人的にもたいへん好きな場所です。
憩いの空気に満ちた公園内には、いくかのレストラン、カフェが点在しています。公園内の見取り図がこちらにありますが、日比谷茶廊はこの地図の右下、心字池の近くに1949年に創業を始めたオープンカフェです。緑に映える白いパラソルの下、青空を見上げながら飲む世界各国のビールやカプチーノのおいしさは格別。
「おそらく、日本で初めてのオープンカフェだったのではないかと思います」
そう話してくれたオーナーの山口兼嗣さんは三代目。創業者は山口さんの祖父でした。
「当時このカフェは資料館の横、画廊のとなりにあり、店名は画廊をもじって『茶廊』とつけたそうです」
山口兼嗣さんは、かつて日比谷公園の中にあった日比谷幼稚園の最後の卒業生。日比谷公園で昆虫採集をして過ごした、いわば生粋の”日比谷公園育ち”です。
「私が5歳、年中組のときに幼稚園が廃校になりましたから、40年以上前の話ですね。でも、幼稚園こそ姿を消しましたが、日比谷公園の風景は基本的に変わっていません。樹々が大きく成長しただけ。ご年配のお客さまは 『かつてはまだ樹々が小さかったから、テラスに座ると公園の向こうまで見えていた』とおっしゃいます」
次のページで、オープン当初からの日比谷茶廊の歩みをご紹介しますね。