すずらん通りの一角に
神田すずらん通り、荻窪すずらん通り、阿佐ヶ谷すずらん通り、そして経堂すずらん通りと、東京にはいったいいくつの「すずらん通り」があるのでしょう? 神田の路地裏で50年にわたってコーヒーを淹れ続けた茶房「李白」が2004年に経堂に移転したのも、もしかしたら「すずらんつながり」ではなかったかと、つまらないことを考えたりもします。
それはともかく、経堂駅の北口から長く長くのびるすずらん通り商店街にCura2がオープンしたのは2006年8月のこと。ネットショップとして人気を集めていた天然酵母パンと焼き菓子のお店「Cura(クーラ)」が前身です。オーナーは大西麻子さん。
ひとめぼれの瞬間
扉に手をかけて中に入ったとたんに好きになってしまうカフェがあるもので、それはもうなんと申しましょうか、頭がいろいろと材料を集めて判断する前に、五感が一瞬のうちに「ここが好き」と感知してしまっているのです。
そんなひとめぼれのカフェに入ったときは、まず空間の”全身”を見て共感を抱き、それから少しずつ家具や、なにげなく置かれている本や、メニューなどの細部をゆっくりと眺めていくにつれて、いっそう好感の度合いが増していくもの。直感で判断したカフェの印象は、細部までゆるがないものなのです。
ほんの少しだけ困るのは、誰かにその魅力を説明したくなったとき。「こういう世界にぴんとくるひとは、とても好きになると思う」とか「きっとあなたと相性が良い場所だと思うから、行ってみてください」くらしか言えないのですよね。
Cura2もそんなカフェのひとつでした。庭のある古い一軒家を改装してオープンした店内には、天然酵母のパンやお菓子がこんがり焼ける良い匂いが漂っています。