空に近いカフェ
大通公園の近く、細い裏通りに面した古い雑居ビル。1階奥の狭いエレベーターに乗り込み、7階にあがってお店のロゴを確認するまでは、本当にここでいいのかしらと微妙に不安。東京のカフェなら珍しくないロケーションですが、札幌の街としては少数派ではないでしょうか。2004年10月、事務所として使われていたスペースをカフェに改装。幅の広いカウンター席と、レコード棚で仕切られたゆったりしたソファ席。日射しを浴びる(表通りとはひとあじ違う裏通りの陽光)気分のいいテラス席。洗練されているけれどちっとも力みのない、肩の力の抜けた大人のセンスを感じます。
何よりも私を惹きつけたのは、雑踏を見下ろす位置に作られたこのカフェの浮遊感でした。 空に近い場所。風が通り抜けていく感じ。昼間はふっと重力から解放された心を空に彷徨わせるのにふわさしい場所。 夜はジャズの響きに包まれて、身体の底に不思議な高揚とインスピレーションの閃光を感じる場所。東京にはこんなカフェがたくさんありそうでいて、実は稀少なのです。しかもきちんとネルドリップしたコーヒーが飲めるなんて、ほとんど奇蹟。
壁に貼ってあるジャームッシュの『コーヒー&シガレッツ』のポスターも、無骨な配管の天井近くに挟みこまれた『モーターサイクルダイアリーズ』のパンフレットにも、この空間の気分がよく表れていました。