完璧な熟成を味わう
ベル エポック1985年 |
上のグラスの拡大図。グラスのベース部分のみに装飾が施されている |
ベル エポックの1985年を試飲しながら彼は「コンフィ、蜂蜜、蜜蝋、ローストしたヘーゼルナッツの香りがある」と述べる。これは「蔵出し」だけあって、ブドウの収穫年から25年を経たシャンパーニュにしては非常に状態がいい。澱と共に熟成して若々しいだけでなく、安定した環境で熟成したワインの澄んで落ち着いた風味と、甘やかでソフトな熟成香が感じられた。
このワインならば、フォアグラの脂やクリームの味わい、かぐわしいトリュフの香りでも受け止められそうだ。シェフのヴォワザン氏が作ったメインの肉料理は『トリュフをまとわせたブレス産プーラルド バスマチライス フォアグラとトリュフ』。ブレスはフランス随一の家禽の名産地で、「プーラルド」はフランス語で「肥育鶏」。柔かくソフトだが充分なコクがある鶏をジューシーなピンク色に加熱し、泡立てたクリーミーなソースとの刻みトリュフをかけ、フォアグラとトリュフでねっとりと仕上げたバスマティ米を添えた一皿である。
刻みトリュフは細長く刻まれているのでスライスよりも香り立ちがいい。それがたっぷりと散らされており、トリュフの芳醇さとベル エポック1985年の芳醇さ、双方が口の中でせめぎ合う愉しみが味わえる。また、バスマティ種の米もトリュフと同じく、形状が細長くサクサクした食感。濃厚ながら繊細な香りと食感という点では鶏もひけをとらない。これは鶏と米とシャンパーニュの三つ巴が楽しめる味わいでもある。鶏とクリームソースに米を添えるのは古典料理だが、これほど華やかな現代料理にも仕上がるのだ。