「ルネ・ラルー」の秘密
キュヴェ『R.ラルー』は、1939年から34年間マムの経営に手腕を発揮したルネ・ラルー氏へのオマージュとして造られた。彼はマムのシャンパン販売量を1945年の100万本から1972年には600万本まで伸ばしただけでなく芸術への造詣も深く藤田嗣治との親交があり、マム・ロゼのボトルでコルクを固定している針金(ミュズレ:muselet)についた金属板(プラーク:plaque)は、現在でも藤田が描いたバラがあしらわれている。
キュヴェ R.ラルー 1998年(写真提供:ペルノ・リカール) |
1998年はブドウの成育期間に気候の移り変わりが激しいヴィンテージで、4月に霜と雹、ブドウが花をつける時期まで雨が続き、冷え込んだ初夏から一転して8 月は猛暑、9月の初めは豪雨、収穫期が好天に恵まれたため、まろやかな深みと適度なみずみずしさを備えたワインとなったという。
抜栓後すぐに味わうとさらりとスムーズな口当たりだが、酸素に触れて風味が開いてくると柑橘系果実のほろ苦いような風味だ。白い花やアカシア蜂蜜の香り、コンポート、ヘーゼルナッツといった深みが味わえる。穏やかで角のない酸味があり、複雑な風味と充分な余韻。スケールの大きいキュヴェであることが判る。
使用しているブドウはマムが所有するグラン・クリュ(最高ランクである100%格付けの畑)12村で栽培されたピノ・ノワールとシャルドネを半分ずつブレンドする。熟成期間は8年で、ドザージュ(残糖分)はリットルあたり6gとかなり控え目である。マムはシャンパーニュ地方のモンターニュ・ド・ランス、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ、コート・デ・ブランといった主要地区のグラン・クリュを中心に218haの自社畑を保有している栽培者でもあるのだ。