すべてブドウの恵み
瓶が完全に逆さまになる時点で瓶口に澱が溜まるので、すばやく栓を抜いて除き、目減り分を古酒(2002年ヴィンテージの場合は1983年の遅摘みピノ・ブラン)で補う。スパークリングの澱引きの際に、通常は糖分を加えるのだが遅摘みブドウだから甘口ワイン、しかも年代物だからそれ自体が深みのある熟成香をほんの少しこのスパークリングに加えることだろう。なんともよく考えられたシステムである。二次発酵で酵母の旨味と香りをたっぷり溶け込ませ、さらに古酒の滋味を利かせたこのゼクト。しかし最初からこのように濃い色ではなかったことだろう。さらに瓶熟成を経てこのような黄金色を帯びたわけだ。ブドウが健康で熟しているから、果実味とその他の風味が溶け合って渾然一体となっている。何かに似ていると思ったら、ほっこりしたクリやこんがり焼けたサツマイモを連想させるような香ばしさがある。