タキシードを脱がせるように、フォアグラを愉しむ
フォアグラのコンフィとプラリネ ボーム・ドゥ・ヴニースのゼリー ブラックウォールナッツ |
今回、オーダーした「マンハッタン」は、前菜、メイン、デザート、パン、コーヒーまたは紅茶で構成される、ディナーコース。
最初に運ばれてきた「フォアグラのコンフィとプラリネ ボーム・ドゥ・ヴニースのゼリー ブラックウォールナッツ」は、ブドウやヘーゼルナッツなど、秋の味覚を生かした前菜。
その甘さが、フォアグラと相性がいいという理由から、「ボーム・ドゥ・ヴニース」というスイートワインを使ってマリネした、ブドウとゼリーが添えられています。
そのとろっとしたブドウをフォアグラにのせ、ひと口。次は、ゼリーをのせ、ひと口。そして、半割りでころんと転がされたヘーゼルナッツをのせて、ひと口。ラストには、シャキッと水々しいマイクロスプラウトとアマランサス(紫の葉)をのせて、フレッシュなひと口。
ああ、どれも、なんて美味しいのでしょう。フォアグラは無花果などともよく合わせられるので、同じ果物であるブドウも似たような感じだろうと踏んでいたのですが、鼻腔から逃げるワイン香を、口の中でフォアグラがつかまえたとたん、さらにふくよかさを広げるようです。
でも、ヘーゼルナッツは逆に、フォアグラをリードする感じ。コリンコリンとした食感と香ばしさで、雑味のない上品なフォアグラの味わいを、タキシードを脱がせるように、いい意味で崩します。
また、もううひとつ、お皿にアレンジされているのが、フォアグラのプラリネ。これは、ペースト状にしたフォアグラを、細かく砕いて、キャラメリゼしたヘーゼルナッツで包んだもの。コンフィと合わせ、フォアグラを、まさに“Two Ways”で楽しめるひと品です。
イタリアンを「ニューヨーク グリル」風にアレンジ
鮟鱇の赤ワイン風味“ブラサート”エシャロットのキャラメリゼ入りマッシュドポテト インゲンのグラッセとパンチェッタ添え |
メインは、「鮟鱇の赤ワイン風味“ブラサート”エシャロットのキャラメリゼ入りマッシュドポテト インゲンのグラッセとパンチェッタ添え」。
ブラサートは、イタリア・ピエモンテ州の伝統料理で、フレンチで言うと、牛肉の赤ワイン煮のようなもの。これをベースに、「ニューヨーク グリル」風に昇華させるのが、ナディーンシェフの個性ある表現。
そこで、牛肉のかわりに選ばれたのが、晩秋から冬にかけて、美味しさのピークを迎える、鮟鱇(アンコウ)。ジューシーさを保つため、その身は軽く焼かれているとのことで、ぷりぷりと言うより、ぶりぶり。かなりの弾力を感じます。
一見、プルーンにもペコロスにも見えたのは、赤ワインでキャラメリゼしたベイビーエシャロット。そこに、噛むと口の中できゅっきゅっと新鮮な音を立てるインゲンやトマト、グリーンオニオン入りのマッシュドポテトなどを添え、ひと皿を完成させています。
赤ワインソースをつけると、深みが出ますが、そのままでも美味しいのは、アンコウが何よりフレッシュな証拠。ステーキのようなボリュームですが、かすかな苦みと充分な甘みに舌鼓するうち、あっという間にお皿は、ソースがそこにあった痕跡だけになります。
アクセントは、アンコウのまわりに散らされたパンチェッタ。これも、ブラサートのトラディショナルなポイントをキープしている部分です。
男性も好みそうな、夜景が似合う大人のデザート
チョコレートモカタルトとウィスキーパルフェ カカオ豆のテュイル |
デザートは、「チョコレートモカタルトとウィスキーパルフェ カカオ豆のテュイル」。
見るからにタルトが濃厚そうだったので、軽そうなパルフェから口にしてみたところ、エアリーな食感とは裏腹に、ウィスキーの味が強くてビックリ。なので、軽いだけのデザートではないところは、ひとつの魅力としても、お酒に弱い人は食べられないのではと一瞬、思ったのも事実。
でも、食べ進めていくと、それは、ウィスキーが多量に使われているというより、クリームをホイップすることで、ウィスキーの芳醇な香りが、より立ち上っているのだと実感。
ナディーンシェフいわく、「アルコールのフレーバーとチョコレートのコンビネーションを、堪能してほしいという思いから生まれたふた品」。男性も好みそうな、夜景が似合う、ちょっぴりいい気分になる大人のデザートです。
次ページでは、ナディーンシェフのインタビューと「ニューヨーク グリル」のクリスマスメニューをご紹介します!