先日の田下さん(ゲーム業界ニュースガイド)の記事「
ゲームらしいゲームよどこへいく」は、わたくしも日ごろから思っていたことをズバリと書いてくれました。これを読んで、わたくしからも述べたいことが湧いてきた次第です。田下さん、キッカケをありがとう!(笑)
| 任天堂とソニーの対照的な「宣伝」戦略 |
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『もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング』は、現時点で450万本を超える大ヒットソフト。 |
田下さんは記事の中で、「脳トレの大ヒットをはじめとして、ツール系のゲームが次々に出現し、逆に従来型ゲームの売上げが減少し、その立場が危うくなっている」と書いておられました。
この点について付け加えさせていただくと、(RPGやアクションゲームなどの)従来型ゲームの売り上げの減少自体は、ツール系ゲームが流行する以前から起こっていたことではありました。ゲーム業界の閉塞感を打破するべく投入されたマシンがニンテンドーDSであり、その大ヒットをもたらしたのが『脳トレ』などのツール系ゲームだった、というわけですね。
そのうえで田下さんは、従来型のゲームであっても「多くの人が、私にもできる、と思ってもらうための分かりやすいゲーム内容と、幅広い層に興味を持ってもらえる分かりやすいプロモーション」を押さえれば大ヒットする可能性はある、と書いておられました。
ここで注目したいのが、「プロモーション」というキーワード。商品の魅力をどのように伝えるかを考える、要するに「宣伝」のことですね。ニンテンドーDSやWiiが絶好調の任天堂と、PS3の売り上げが伸び悩んでいるソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)のプロモーションを比べてみると、両陣営の「明暗」が垣間見えてくるようです。
任天堂は2005年に発売した「ニンテンドーDS」から、プロモーションの戦略を大きく変えました。それ以前の任天堂ゲーム機のテレビコマーシャルでは、「ゲーム画面」をふんだんに見せる内容のものが主流でしたが、ニンテンドーDSでは「ゲームを楽しんでいる人」を見せることを重視しました。普段ゲームを遊ばない人にゲーム画面を見せるよりも、楽しそうに遊んでいる人の表情を見せるほうが、興味を抱いてもらいやすいという狙いからです。宇多田ヒカルさんや松嶋菜々子さんを起用したコマーシャルなどは、その代表例でしたね。
この戦略はWiiのプロモーションにも受け継がれています。最近では『マリオパーティ8』を家族そろって楽しむ内容のコマーシャルが放映されていましたね。Wiiの公式プロモーションサイトでも、老若男女さまざまな人たちが実際にゲームを楽しんでいる映像が多数配信されています。
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左写真/『レイトン教授と不思議な町』も、大泉洋さんを起用したコマーシャルの効果もあって大ヒット。 | 右写真/『Wiiスポーツ』でも、ゲーム画面だけでなくゲームを遊んでいる人の表情を見せることを重視。 |
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……そして、一方のSCEのプロモーション戦略は、任天堂とは対照的です。しかも、かつてPS2で市場をリードしていた頃のSCEと、現在のSCEのプロモーションとを比べてみると、これまた対照的であるように思えてきます。
つぎのページで、任天堂の優勢を許してしまっている
SCEのプロモーション戦略について見てみましょう。