平均点主義と一点豪華主義
僕はかねてから、ゲームファンは「減点法」でゲームを判断する人、「評価法」でゲームを判断する人に分かれると思っている。つまり「及第点の操作性」「及第点のグラフィック」「及第点のゲーム性」などは当然備わっているものとして、それを阻害する要素があるとゲーム全体の評価が下がるタイプの人。
また、一点突き抜けて評価できる点があれば他の多少の難点は目をつぶれるというタイプの人。
始めに言っておくと、今回紹介する『オーディンスフィア』は激しく芸術性の高いゲームである。
その高い芸術性のために、いくつか犠牲にされている点がある(と、筆者は思う)。
その分、その高い作品性に魅了されたユーザーも多い。
筆者はこの製作チームが1997年に発売したセガサターン用アクションRPG、『プリンセスクラウン』のファンである。
大ファンである。
10年ぶりに発売された同系統の作品とあり、心待ちにして発売日に手に取った。
結論から言うと、筆者にとって「待っただけはある」作品だった。
超美麗な箱庭での一大叙事詩
イラストからもその美麗さは伝わるが、ゲーム内でもその魅力は十二分に発揮される。 |
正直、過去何本ものゲームをレビューしてきた身にとって、グラフィックを誉めることも一度や二度ではない。
それでもあえて言おう。
『オーディンスフィア』は美しい。
3D全盛の現在にあって、場面場面が一枚の絵画を思わせるような美しさである。
表現上3Dを使用しているものの、綿密に書き込まれたキャラクターたちが幻想的な舞台の上で動き回るのは、壮大な舞台演劇を観るかのようである。
ゲーム中筆者は何度も夢の中にいるような、なんともいえない感覚に陥った。
一度この舞台世界に引き込まれれば、後は比類しがたい没入感が得られるだろう。
このゲームを肯定できるかどうかはまさにそこで、没入してしまえばあらゆることが許容できる。
たとえばアイテム購入のシーンなど、その作りこみが顕著に見られる。
主人公が商人に話しかけると、商人は袋の中に手を入れてゴソゴソと商品を探す。
欲しいものを選択するたびに商人はそれを袋の中から出し、主人公に見せる。
買い物をやめると商品を袋に突っ込み、袋をとじてひざに手をつく。
それだけのシーンなのに、驚くほど表情豊かに綿密なアニメーションを見せるのである。
ただし、買い物の作業としてみるとやや緩慢であり、こなれていない印象を受ける。
作業性を取るか、演出を取るかで遊ぶ人のイメージが大きく変わるのである。
これだけ高い芸術性をもつ作品、まずはゲーム開始時からして他のゲームとは少し違う。