東京の街のおすすめ散歩コース
gooランキングにて「散歩してみたい東京の街」が発表となった。散歩に興味がある人たちによって投票されたのだろうが、それでも実際にかなり歩いている人もいればそうでない人も投票をしているのだろう。そのあたりが実に興味深い。順位全体を見てみると、なるほどと思えるものもあれば、そうでないものもある。
たとえば、散歩者にとってこのあたりの道は楽しいのになぁと思う街がランクインしていなかったり、あるいは、それはちょっとしたブームになっている「街」が順位の上にきていたりするのである。このランキングは「いま」をそのまま表しているのであろう。まさに「いま歩きたい街」なのである。せっかくなので、ランキング順に散歩者にとっても街の特徴などを解説してみようと思う。
<目次>
歴史ある街「浅草」
第1位は浅草。東京の街を散歩するというイメージにいちばんぴったりくるのは「浅草」なのだろう。雷門に行けば、いつだって外国人旅行者や修学旅行生たちでいっぱいである。しかも、この街は歩くしかない。まずは雷門をくぐる。そうすると仲見世通りがある。両側にお店が並んでいる。土産物を見たり、揚げまんじゅうを買って、歩きながら食べたりしながら浅草寺にお参りをする。その周辺もさまざまな通りがあって、実に楽しい街である。
上っ面だけを見れば、どこか懐かしい日本の風景がある。しかし、その中には新しいものも発見できるはずだ。たぶん一日散歩をしても飽きない。そして、一日散歩しても浅草のすべてはわからないのだ。それだけ奥深い街だともいえる。
石畳の街「神楽坂」
第2位は神楽坂。散歩する範囲でいえば、さほど大きいとはいえないこのエリアだが、神楽坂の人気は高い。テレビドラマ『拝啓、父上様』によるところも大きいのだろう。この番組にそったオフィシャルガイドブックも出ているほどだ。
もちろん神楽坂は昔から散歩コースとして人気があった。かつては夜店が並び、牛込花街として栄えた街である。そして今も路地を一本入るとかつての花柳界の街をしのぶことができるお店や石畳がある。歩いているだけで、江戸の終わりから戦前までの懐かしい雰囲気を味わうことができる街である。
懐の深い街「麻布十番」
麻布十番は古くからある商店街で、江戸の中期頃から賑わっていた街である。最初は、古川の荷揚げ場所として、この地に多くの人が集まってきた。その後、麻布十番が大きく変わったのは大正時代。関東大震災で被災した下町の商人たちが被害の少なかった麻布十番に多くやってきたのだ。
さらに飛躍したのは、南北線、大江戸線という地下鉄の駅ができたことだ。この街を散歩するおもしろさは、今も変わらぬ老舗と新しいお店が混在している点だろうか。いつきてもなにか新しい発見がある。
若者に人気スポット「下北沢」
第4位は下北沢。下北沢に限らず、東京には若者の街というのがいくつかある。たとえば、原宿に行くと中学生や高校生が多い。ここ下北沢は大学生が多い街だ。不思議なことに昔からずっとそうなのだ。すなわち僕が20歳前後であった30年前もおなじように大学生を中心とした街であった。
そのためか、いま年をとってこの街を歩いているといきなり自分が30年前に引き戻される感じがする。とはいえ、若者だけではない、大人向けのお店などもある。それもまた30年前と変わりがない。
下町の情緒が残る「佃島・月島」
第5位は佃島・月島。歩くのには実に楽しい路地が今も残っている。月島は「もんじゃ焼き」の街である。本当に想像を超えるほどのもんじゃ焼き屋さんがある。そして、おいしそうな匂いが街中に漂っているのだ。
さらに一本路地にはいると、なんともレトロな家並みがある。隣の佃島は歴史のある街である。佃大橋ができるまで佃島は名前の通り、島であった。江戸時代、徳川家康が大阪の佃から連れてきた漁師たちに与えられた島である。佃煮発祥の地でもある。もちろん佃煮を売る店もある。今も古いたたずまいを見せる街だ。
寅さんの街「柴又」
第6位は柴又。やはり、東京の散歩といえば下町というのが代表選手なのかもしれない。京成金町線の柴又駅前には、寅さんの像がある。「生まれも育ちも葛飾柴又です」と寅さんの口上が聞こえてきそうだ。山田洋次監督の映画『男はつらいよ』の舞台となった柴又は散歩する街として人気が高い。帝釈天や映画の舞台となったお団子屋さん、寅さん記念館、江戸川の矢切の渡しなど見るポイントも多く歩きがいのある街である。
自然の残る街「谷根千」
第7位は谷根千である。谷根千とは谷中・根津・千駄木といった地域。今でも天気のいい休日には多くの人が散歩している。山手線の鶯谷駅、日暮里駅あたりから歩ける広範囲な地域だ。もともと「谷根千」とひとくくりにしたのは、地域雑誌の影響だが、ひところはちょっとしたブームであった。今も大規模な再開発にあうこともなく、昔のままのひっそりとした街のたたずまいは散歩者の心をなごませてくれる。
デートにもおすすめ「銀座」
第8位は銀座である。東京の散歩というイメージでいえば銀座なのかと思っていたが、順位は低かった。大人の街ともいえる銀座は日本橋あるいは有楽町などとも連なる、デパートや名店の街である。「銀ブラ」という言葉もあるように銀座は東京散歩の王様だった。ただし、この「銀ブラ」、語源はブラブラするということではなく、「銀座でブラジルコーヒーを飲む」ということだったそうだ。
古本を見てまわる「神保町」
第9位は神保町。ここはいわずと知れた古書街である。それぞれの専門分野にわかれたお店をまわるのも楽しいだろう。ブラブラ歩くだけでも楽しい。もちろん昔ながらの喫茶店も多い街だ。購入した本を喫茶店で眺めるといった散歩は実に楽しい。そういったことから、この順位は少し意外だった。神保町は、靖国通りから九段下方向、あるいはJRの御茶ノ水駅、水道橋駅も近く、足をのばせばいろいろな場所がある。散歩のロケーションとしてもなかなかいい街である。
アメ横を歩きたくなる「上野」
第10位は上野。まず上野の顔ともいえるのが、西郷隆盛の銅像であろう。ここ上野公園は自然も豊かであり、博物館などもある。また、アメ横も上野散歩の楽しみのひとつである。上野は懐の深い街である。もちろん、上野から浅草方面、北の鶯谷方面、あるいは秋葉原などへ歩いてもいい。どちらの方向に歩いても楽しいのが上野である。
そのほかの街でも楽しい散歩ができる
ベスト10に入っていない街を思いつくままにあげてみよう。まずは、本郷だ。空襲を逃れた戦前の建物などが残り、樋口一葉をはじめとした文学者たちのなじみの街である。それから、原宿や青山といった若者の街も選外だ。また、新宿、池袋、渋谷といったターミナル駅もここには入っていない。歩いてみるとけっこうおもしろい街なのだが…。
また、電気街であり、オタクの聖地ともいえる秋葉原も選外だ。あるいは吉祥寺や井の頭公園などもない。それから、六本木や赤坂といった街も選外。街ではないが皇居周辺の散歩道もない。それだけ東京そのものが、実に楽しい散歩コースを内在している都市だという証だろう。
<関連記事>