日本橋「たいめいけん」で洋食を食べる
猛暑になるだとか、冷夏になるだとかいろいろな予測があったが、やってくればいきなり暑い日が続いた2007年8月。我が家の非力なエアコンは、ウンウン音をたてるだけでまったく効かない。今年はそんな暑さである。
だからといってエアコンの効いた喫茶店やファミリーレストランにいるのもいやだ。
むしろこういうときは屋外にいるほうが涼しかったりする。
汗をかき、公園の木陰などで風に吹かれていると、実にいい心もちになる。
というわけで、日本橋に行ってみた。
東京メトロの日本橋駅C5の出口をあがるとそこは永代通りである。右側の道を入るとすぐに「たいめいけん」の看板が見えてくる。
これがタンポポオムライスだ
「たいめいけん」は昭和6年創業である。いまは立派なビルとなり、昔の面影はないが、老舗としての味はずっと引き継がれている。ここで有名なのは卵料理。なかでも映画「タポポポ」に出てきたタンポポオムライス(伊丹十三風)1850円はここの名物である。
1985年公開のこの映画は実におもしろかった。まずいラーメン店を流行の店のするというあらすじに、それとは関係のないさまざまな食のエピソードが出てくる。中にはとてもエロティックなシーンもあった。
そこに出てきたのがこのオムライス。夜こっそりとレストランの厨房に入り込み、グルメなホームレスがお腹のすいた少年のために作るのだが、チキンライスの上に乗せた卵をナイフで切るとドロリと半熟卵がライス部分を覆うのである。
初めて見た光景であり、実においしそうだった。
ところが、ここはカレーライスもすごい。
おいしいというよりも、懐かしい味である。とは言うものの、この懐かしいという表現は、僕自身が体験して懐かしいというわけではない。
ここのカレーは僕自身も初めての味である。昭和初期のカレーとはこういう味だったのだろうという懐かしさなのだ。
以前、「横須賀を歩き、海軍カレーを食べに行く」という記事の中で食べた元祖海軍カレーの味に近い。
薄味のスープはある意味上品。今のようなオイリーでスパイシーなカレーとはかなり隔たりがる。
最近はほとんど使わないが、「バタくさい」という言葉がある。西洋かぶれという意味だが、もともとは、バターの香りのことだ。
明治になって、バターが日本に入ってきたとき、この香りがニガテな日本人は多かった。
今とは味覚がずいぶん違ったのだろう。たぶん、このカレーも当時は十分にバタくさい食べ物だったのだろう。
■たいめいけん
東京都中央区日本橋1-12-10
1F
[月~土]11:00~21:00
[日・祝]11:00~20:30
無休