デパートでお子様ランチを
世間は夏休みである。月曜だろうと、火曜だろうと、街はいつになく活気に満ちている気がする。
僕たち大人にはずいぶんと縁のない夏休みだが、ひとつ気持ち次第では楽しめないこともない。上野で午前11時にプロデューサーEくんと待ち合わせ。
今回は夏休みを探して歩くことにする。まずはデパートへ行こう。上野松坂屋である。
子供のころ、デパートへ連れて行ってもらうことはうれしいことだった。おもちゃ売り場か屋上に僕と弟はいた。親は買い物をしていた。そして、デパートのレストランへ。昭和30年代のことである。お子様ランチは何歳くらいまで食べていたのだろうか。
僕が食べたお子様ランチはオーソドックスなものだった。チキンライスの上に旗があった。僕がお子様ランチを食べなくなったころ、年下の子供たちが食べているお子様ランチは激変していた。器が新幹線だったり、スーパーカーのようなものだったり。ちょっとした玩具がついていたりしたものである。それを見て時代が変わったなぁと思ったりした。昭和40年代のことだ。
やはりクリームソーダだ
クリームソーダの向こうに見えるものはなんだろうか。それは遠い記憶なのかもしれない。 |
「やはり、デパートの食堂ではクリームソーダでしょう」
と言う。Eくんの記憶の中にはクリームソーダがあるのかもしれない。僕はあまり好きではなかったが、やはり子供はクリームソーダを注文した。
ソーダ水の泡を見ていると、子供のころのことがよみがえってきた。デパートの食堂で食べた思い出はホットケーキである。4歳のときだったと思う。フォークとナイフ、メイプルシロップなどが出てきて、食べるのにひと苦労した。メイプルシロップが手や体についてベタベタした記憶が残っている。このときは母親と弟と僕で食堂に入り、母は弟の世話で手一杯だったのかもしれない。ホットケーキの味はよく覚えていないなぁ。
同じくらいの年のころ、やはりデパートの食堂の記憶。父もいた。サンプルを見ながら注文。父はチャンポンを注文した。初めて見るチャンポン。肉や野菜がいっぱい入っていて、僕はニガテだなぁと思った。
「お父さんはチャンポンが好きだから…」
と母は言った。そうか、初めて知ったよ。両親は僕が生まれる前から知り合いだったんだなぁと思った。
上野松坂屋の屋上にある神社にお参り |
と言いながらEくんは階段をのぼる。そうだ、デパートといえば屋上だ。子供の気分で屋上に出てみる。気分は子供だが、目線が高くなっているので、さまざまな乗り物が低く見える。そこで、少ししゃがんで子供の目線になろう。僕が子供のころは「鉄腕アトム」だったり「鉄人28号」の乗り物があったりしたが、いまは「ドラえもん」「アンパンマン」「機関車トーマス」である。
母親が小さい子供2人を乗り物に乗せている。ああ、僕も子供のころ弟と母親でデパートの屋上にきたことがある。そして、ときどき父親もいた。ベンチに座った老夫婦が目を細めて子供たちを見ている。孫なのかと思ったら、そうではないようだ。それでも楽しそうだ。
屋上の別のスペースには稲荷神社があった。お参りをする。ここがデパートの屋上であることを忘れてしまう。
■銀サロン (ギンサロン)
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