江戸時代から庶民に愛される、飛鳥山の桜

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飛鳥山公園の手前、音無親水公園からスタート。桜に始まり桜に終わるコース
3月30日、金曜日の午前11時に王子駅で待ち合わせ。気象庁の桜の開花宣言から一週間、都内の桜は満開だった。僕は地下鉄東西線の早稲田駅から飯田橋。飯田橋で南北線に乗り換えて王子駅に向かった。そろそろ王子駅というところで、声をかける人がいた。オールアバウトプロデューサーのEくんである。

「おはようございます」

とかける声が酒臭い。

「昨晩は会社の歓送迎会があったんですよ」

と言う。ああ、なるほど。そんな時期だなぁ。会社なら異動、学生なら進入学のシーズンだ。そんな時期に桜は咲くのである。

今年こそ行ってみたかったのが飛鳥山の桜である。ここは徳川八代将軍の吉宗が、1270本の山桜の苗木を植えさせたのが最初だそうだ。江戸時代から庶民の桜として親しまれていたのだ。もちろん、当時も上野のお山など桜の名所はいくつかあったが、そういった場所では、酒宴や仮装などをしてドンチャン騒ぎをすることは禁止されていたそう。それがあって庶民の桜の季節といえば、ここ飛鳥山にやってきたのである。

落語「長屋の花見」や「花見の仇討ち」の舞台もここ飛鳥山である。そんなことを話ながら地下鉄の階段をあがる。空はどんよりとしている。花曇りである。

「そうだ、会社の人から教えてもらったんですけど、ここに老舗の玉子焼きを売っているらしいんですよ」

Eくんの言葉を聞きながら飛鳥山公園だと思われる方向に歩いていくと、いきなり玉子焼きを売っているお店というよりも屋台のような場所があった。

「ここじゃないの」

と購入。やはりここのようだ。「扇屋」さんという名前のお店である。なんと、この店は創業350年。もともとは、大きな料理屋さんで、落語「王子の狐」の舞台にもなったそうだ。僕は、Eくんに聞かれ、勘違いして「今戸の狐」の話をしてしまったが、「王子の狐」というのは、人間と狐の化かしあいの噺である。

扇屋が入り口にある、こちらも桜が美しい音無親水公園を抜け、飛鳥山公園に向かう。

桜を愛でながら、350年の伝統を誇る玉子焼きを頬張る

飛鳥山公園で扇屋の玉子焼きを食べる。半分のサイズで630円。
飛鳥山公園はすぐに見つかる。王子駅の西にある小高い丘が飛鳥山である。桜の古木がずらりと並んでいる姿はさすがに圧巻。650本あるのだそうだ。江戸時代には、奇抜な仮装をした花見客もたくさんいて、花ばかりではなくそういったお客を見るのもひとつの楽しみだったようだ。

平日の昼間ということもあったが、今は逆に花見客はごくおとなしい。むしろ上野公園などのほうが酔客の数は多い。僕たちは、蒸気機関車や路面電車が展示してある広場で玉子焼きを食べることにした。

扇屋の看板には「親子焼き」というのがあって、それにはネギや鶏肉の入ったものらしいのだが、今日はまだ売り出されていなくて普通の玉子焼きである。半分ほどのサイズで630円。甘い玉子焼き。ふわふわとした食感でなかなかおいしい。

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飛鳥山公園一番の絶景はこのメインストリート!本郷通り沿いから見られます
食べ終わると花曇りだった空から晴れ間がのぞいている。桜は曇り空でも十分美しいが、晴れているとまた一段と素晴らしい。青空とピンクの花びら、わずかに芽吹きだした若葉のコンストラクトはただただ見とれてしまう。


地図を広げてみると、このあたりの住所は「滝野川」という名前を冠したところが多い。かつて、東京市の時代、こののあたりは滝野川区であったのだ。そんな話をしているとEくんは、

「滝野川と聞いて、お昼は滝野川大勝軒に行きたくなりましたね」

と言う。ほう。それでは行ってみよう。