散歩/和む散歩ルート

【番外編】波照間島 日本最南端の散歩(2ページ目)

10年前、飛行機から見た波照間の美しさが忘れられず、日本最南端の有人島、波照間にやってきた。思わず叫びたくなるような青い海とどこまでも続くさとうきび畑。この世の天国に来てしまった。

増田 剛己

執筆者:増田 剛己

散歩ガイド

やがて日本最南端

日本最南端の碑。本土の青年が碑がないのを見かねて作ったとのこと
両側をさとうきびに挟まれた道を歩いていると、遠くに海が見えた。海のあるほうへ足を進めると、日本最南端の碑が見える。特に何があるというわけではないのだが、一番南かぁとなぜか感慨深い。

入り口からは両側を石で固めた蛇の形をした道が続く。その石は全国から集められた石でできているそう。戦争で本土と沖縄が分離された記憶を二度と忘れないようにするためとのこと。悲しい過去。

ずんずん歩く。碑らしきものが現れる。あ、これだ。「日本最南端之碑」と石に刻んである。聞けば、本土の青年が最南端を示すものがないからと手作りで立ててしまったとのこと。かたわらにはまぶしいくらいの日の丸。海を見れば、遥か向こうはフィリピン。遠くにきたもんだ。

日をよけるように最南端の碑に寄りかかって涼んでいると、どっと疲れが出て、動けなくなってしまった。宿泊予定の宿にこの日差しのなか、帰るのもいやだったので、日が落ちるまでずっと涼む。

そのまま2時間もいると、ようやく日が暮れてきた。すでに19時半を回っている。南の島の夕暮れは遅い。当たり前だけど。ゆっくり立ち上がって、周囲に誰もいないことを確認して、咆哮。遮るものがないので、海風にあっという間に声はかき消される。夕暮れにもう一回叫ぶ。どこからともなく野生のやぎが寄ってくる。

別れの挨拶をして、日本最南端の碑から宿を目指して歩き出す。
波照間の夕暮れ。遮るものがなく、真っ赤に燃えた夕日が海に落ちる


幻の泡盛「泡波」にまかれて、いつか就寝

泡波。生産量が少なく幻の泡盛といわれている。島では意外と手に入ったりするらしいが
宿に着いて夕食をとる。汗がまったく引かず、汗だくで食べる何ともいえない夕食。初ガツオがうまいのだが、汗をふきながら食べるのでつらい。エアコンなんてもちろんない。扇風機も気休め程度しかならない。

さっさとお風呂に入って、寝ようと思うと、宿のおばさんが「前泊した人が泡波を残していったから、飲んでいいよ」と声をかけてくれる。泡波といえば、波照間名産の泡盛だ。そもそも、黒砂糖しか名産がない波照間に現れた救世主。ふつうに買えば600円ちょっとの泡盛が、今や本土では2万円を越える値段で取引されているという。

「なんでこんなに高くなったんだろうね……。ときどき買い占めにくる人もいるけど、島内では、まあツテをたどっていけば何とか購入できるんだけど。私は八重泉(石垣島の泡盛)のほうが好きでね。黒砂糖以外に名物があることはいいんだけど、いつまで続くのかしら。味にそんなに特徴があるわけでもないんだけど」とため息まじりに話してくれた。

せっかくなので泡波をいただく。くせがなく、飲みやすい。しかし、言われなければ気づかないかも。そんなことを思いながら、泡波に浮かぶ氷を眺めて飲んでいたら、部屋に流れ込む風と三線(沖縄の三味線)の音が気持ちよくて、いつの間にか寝てしまっていた。



<関連リンク>
波照間島あれこれ
美ら島物語 波照間島情報
波照間島 - Wikipedia
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