富士見坂を下り、不忍池をめざす

古今亭志ん生が稽古をした場所。「えーっ、人間というものは」
諏訪台で、景色に見とれていると「あ、ここはほら、落語家の…」となにやら後ろからNくんが言う。「ここで稽古してたんですよね」という言葉で、あー、なんで気がつかなかったのか。

そうそう、ここは古今亭志ん生が落語の稽古をしていた場所だ。なぜ気がつかなかったんだろう。本でも読んだことがあるし、先日はテレビでも見た。電車の音でかき消されるので、大声で稽古ができたと、志ん生の長女である美濃部美津子さんがテレビ番組の中でそう言っていた。

再び感慨に耽りながら、山手線の通過する際、大声で「えーっ、人間というものはぁ」と叫んでみる。

富士見坂は数あれど、都内で富士山が見れる坂は3箇所だけだといわれる
それにしても腹が減った。高台から谷中方面に向かおう。そこには「富士見坂」という急な坂がある。教育委員会の看板によれば、いくつかある東京の富士見坂のなかでも現在でも実際に富士山が見える場所だということが書いてある。もちろん今日は見えない。

なぜか、谷中で家庭の餃子を食べる

(上)きさくなママ店主。水餃子もサービスしてくれた (下)とても家庭的な餃子。母の顔が浮かぶような味です
この日は、Nくんが下調べをして見つけたエスニックレストランで食事をする予定だったのだけれど、道なりにいきなり「餃子」と赤い暖簾の店を発見。どうしてもここに入りたくなってしまった。たぶん、以前は焼き鳥屋かなにかだったのだと思われるところである。中に入るとカウンターだけの席。すでに先客の中年男性がランチを食べている。

あとで、わかったのだがカウンターの中のご婦人とは親子なのだそうだ。まだ、店を出したばかり。「何にしますか?」と聞かれるが、あるのは餃子定食だけである。と、出てきたのが、ごく普通の餃子にご飯。味は、中華料理屋の餃子というよりも家庭の味。母親が作ってくれた餃子を思い出した。

しかし、なぜ谷中で餃子なのか、今ひとつわからず、先を急ぐ。このあたりからいろいろな店がある。「谷中ぎんざ」という通りに入るとさらににぎやかになってくる。木彫りの民芸品やら煎餅、饅頭などを売る店など様々。

10円饅頭と1枚の煎餅、そして伝説は終わる…

谷中福丸饅頭店。できたてが常に準備され、これで一個10円は激安!
僕らが足を止めたのは、「谷中10円まんじゅう」という看板。えっ、饅頭が10円なのか。といっても、一個を売ってくれるわけではなく、買えるのは10個から。箱なしで105円。箱入りだと125円となっている。それでも安いねぇ。10個の饅頭が入っている。饅頭は昔なつかしい茶色の皮にあんこ。10円玉より少し大きいくらいのサイズで一口で食べられる。

饅頭を頬張りながら、さらに歩く、谷中ぎんざを抜け、大きな道路に出る。

団子坂 菊見せんぺえ総本店。一枚から買えるのが、うれしい!ぱりっといけます
今度は煎餅屋。昔ながらの店構えにガラスのケースに煎餅が入っている。いろいろ見ていると、おばちゃんが「一枚からでも買えますよ」と言うので、抹茶煎餅を買う。これも頬張りながら歩く。そのほかにも鯛焼きだったりあんず飴だったり食べたいものが次々と目に入ってくる。

そして気がつけば、もう上野動物園。さらに進むと不忍池。と、ここでついに雨。いや、みぞれが降ってくる。ひーっ。いつかは来ると思っていたが、意外に早かったような気もする。Nくんの「晴れ男伝説」もついに終了。