合羽橋の商店街を歩く

懐かしの名役者 伴淳三郎。N君は誰かさっぱりわからず
浅草寺から来た道を仲見世方向に戻る。もう少しお店を見たかったが、右に曲がる。伝法院通りだ。街灯には浅草になじみのある芸人さんの看板など出てくる。このあたりが「六区」と言われた場所だ。最初「ろっく」という音を聞いて、ロックンロールの「ロック」かと思っていたが、そうではない。これは行政区分で、浅草寺あたりは「一区」だったのだそうだ。

それで、この六区あたりに寄席や映画館が立ち並び、繁華街になっていったのだそうだ。まさにここは若者の街であった。とはいっても、明治から戦前までの若者だから、丁稚や兵隊さんなどだったらしい。

いまも映画館などが立ち並んでいる一角を通りすぎて、西に歩く。

国際通りを越えて、しばらく歩くと大きな通りに出る。これが「かっぱ橋道具街」である。食器などをはじめとして、飲食店などで使うものなどを扱うお店が多数ある。ここで、食品サンプルなどを買ってみるのもおもしろいかもしれない。

かっぱ橋道具街というのはこの大きな通りのことを指すらしい。が、僕らはそれを超えてさらに細めの商店街に入る。そこが「かっぱ橋本通り」。ひらがなで「かっぱ橋」とあったり「河童橋」「合羽橋」という文字もあったりする。ちょうど浅草から上野に抜ける道である。ここは、まさに河童のいる商店街だ。散歩するには本当に楽しい通りだと言っていい。

「きんときや」の元祖いもシュー。90円という安さにして、このうまさ!かっぱ橋本通りにあります
「元祖いもシュー」という看板を見つけた。「きんときや」という和菓子屋さんだ。サツマイモを使った和菓子が中心のお店。さっそく買い求めてみる。一個90円。なるほど、シュークリームの皮に裏ごししたお芋に生クリームなどがミックスされている。小さいので1人で数個は食べられそう。

それにしても楽しい商店街。とにかくいろいろおもしろいものが目に飛び込んでくるねぇ。お肉屋さんでは河童のステーキを売ってって、まさかねぇ、聞けば牛肉だったりして、愉快な街である。愉快といえば、商店の前にいる河童たち。中には河童の名前がついているものがある。


(上)かっぱステーキののぼり。気になる方は、肉のさがみ屋までどうぞ (下)通りにはかっぱの像があちこちにあります。探してあるくのもまた一興
「蛙河童」という緑色をした小さな河童のところには、「ご利益 失せ物かえる」と書かれていた。

薬局の前には逆立ちしたボロボロの河童がいた。たいていは木造にペイントが施されているのだが、作られた時期はまちまちのようだ。まだ新しいものもあれば、ずいぶんと年代を感じさせるものもある。

この通りにあるのが梅田雲浜の墓。梅田雲浜は、幕末の尊皇攘夷派の志士である。若狭小浜藩(現在の福井県)の人で幕府側の尊攘派弾圧「安政の大獄」の逮捕者第一号である。

古い歴史と河童の取り合わせがおかしい。そして、その隣には避妊具の自販機。

上野公園は紅葉まっさかり

神宮と双璧をなすくらい美しい紅葉。人が少ないのもいい
かっぱ橋本通りをまっすぐ行くと、松が谷という住所から上野に変わってくる。右が「北上野」、左が「東上野」である。大きな通りは「昭和通り」に出る。向こう側は線路。そこに長い坂がある。その坂をあがり、線路を越えるとすでに上野のお山である。

商店街からいきなり開けた場所に出て、陽が当たると同時に冬の風が吹き付ける。上野公園は、銀杏の樹多く、それらが黄色く色づいている。風の強い日で、銀杏の葉が舞っている。

「この前の神宮前もよかったんですけど、僕はこっちのほうが好きですね」

とNくん。たしかに、並木道になっている神宮前よりもこちらはランダムに銀杏の樹が立っている。色づき方も、目に痛いくらい鮮やかな黄色。

時刻はそろそろ夕方で風が冷たくなってきた。

「上野といえば西郷さんでしょう」

とNくん。あ、そうだねぇ。

上野のお山の大将 西郷さん。その踏ん張り、力強すぎです
この西郷隆盛の銅像は高村光雲作。竣工式は明治31年12月18日。ちょうど今の時期だ。

除幕式に招かれた未亡人のイトは、「あれはうちの人じゃない」と言ったという話が残っている。このことから、写真の残っていない西郷の顔のナゾが語られるようになったのだが、実際のところは、「あんなみすぼらしい格好をしていない」という意味だったのだろう。兎狩りをしているラフな格好の夫の姿にがっかりしたのかもしれない。それ以来、婦人はこの像を見ることはなかったそうだ。ちなみに鹿児島にある西郷像は軍服姿である。

ネタまで披露してくれた「風林火山」(吉本興業所属)。こころ優しい青年だ。こころからヒットすることをネタを見ながら思う
公園でひと休み。ベンチに座ってコーヒーを飲んでいたら、近くのベンチで漫才だろうか、稽古をしている若い男性2名。写真を撮らせてもらい、少し話を聞く。吉本の芸人さんらしい。コンビ名は「風林火山」。その由来は聞かずだったが、山梨の出身なのだろうか。学校を卒業し、芸人として頑張っている。取材の旨を伝えてカメラを向ける。

「ちょっと、さっき稽古してたみたいに」

とお願いすると、

「恥ずかしいなぁ」

と照れながら言う。

「お客さんの前でやろうっていうのにこんなカメラぐらいで」

と僕。本当にまだ始めたばかりだというのが伝わる。

「どこに行くと、キミたちを見ることができるの?」
「いえ、僕らはまだ若手の若手のずーっと若手ですから、なかなか」

と言う。ぜひ、がんばってほしいものだ。こんな人たちに遭遇するのも散歩の楽しさのひとつだ。