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最終回~プロレスとの出会いと別れ(5ページ目)

本コラムも今号の掲載で最終回を迎える。奇しくも、プロレスに関わる最後の機会。今後はどのようなスタンスでプロレスと向き合えばよいのだろう。その最後は思いのままに書かせて頂いた。

執筆者:川頭 広卓

プロレスへの区切り

それでも、レスラーはレスラーとしての仕事を真っ当するしかないのだろう。ファンも、ライブや映像でプロレスをプロレスとして楽しべばいい。

では、これを世に広めるメディアの人間はどうすればいいのか。

昨年、話しを伺った「1976年のアントニオ猪木」の著者・柳澤健さんの「今が適正なんだと思う」という言葉が心に強く残っている。

昔のプロレス人気が異常で、現在こそがプロレス界の適正規模――。

きっとプロレスへの興味がどんどん薄れていったのは、業界への失望感と、あまりに見えない将来性を痛感したからなのだろう。

そんな抜け殻同然の自分の支えとなったのは、3年連続、現地でWWEという極上のプロレスを体感することができたこと。WWEモバイル・スタッフとの旅や仕事が信頼に足り、心の底から楽しかったこと。徐々に盛り返していく新日本プロレスの存在を感じたこと。ブログがきっかけながらも、不義理の末に去っていく者とは別に、一人の人間として、友人として信頼関係を保ってくれた一部の選手や元関係者の存在があったこと。どんなときも一緒にプロレスを考え、観戦してくれたプロレス仲間の存在があったことなどだ。

だが、否応なしに魔法は解けていく。

プロレスを語り、プロレスを楽しむ視線が全て過去の出来事へと向きはじめていくと、本コーナーでも、いわゆる“前モノ”となる見所的なレビューは一切できなくなり、また、現在進行形のプロレスに関しては、残念ながら語る言葉を持ち合わせず、結局は他人の言葉でプロレスを語って貰うという方向にシフトし、これこそが唯一楽しめるプロレスでの仕事となった。

プロレスに関わりながらも、深くは関わりたくない。

そんなことを考えながらも気がつけば数年。偶然にも今年、プロレスに関わる仕事が一斉に手を離れることになった。

しかしながら、仕事でプロレスに携わることがなくなったとして、今後はどのようなスタンスを取るのか。いや、早い話しがファンに戻ることはできるのだろうか――。

答えはやっぱりノーだ。

プロレスを語ることはあっても、純粋な気持ちで観戦することはもうできないだろう。中途半端に観続けることこそ、ファンやレスラーに失礼なことはない。だからこそ、足掛け20年、人生の大半の時間を費やしたプロレス界への区切りは、本コラムの終了をもって替えさせて頂きたいと思う。お世話になった方々へ。そして、プロレス界へ。

本当にありがとう。

<2009年6月30日、はるひ野の自宅にて>
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