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藤原喜明 ロングインタビュー(2)(2ページ目)

藤原喜明インタビュー続編。入門10日でデビューを果たす偉業の裏に隠されたバックボーン。そのファイティングヒストリーからゴッチとの出会い、トレーニング、禁断の道場破りに至るまで――。

執筆者:川頭 広卓

「総合と違う。競技ではない勝つ為の技だ」

――それは、力で抑えようと?

「強くたってさ、毎日コレ(シュート)で来られたら、そりゃたまんないよ。だから毎日謙虚にして、何かあった時だけは対応する、と。やっぱり力だからね」

――ゴッチさんも力は強かったのですか?

「ゴッチさんなんて“力じゃない”っていうけど、力はもの凄いよ。ウェイトトレーニングなんてやったことないっていうけど、実は一年間だけ、びっちりやってた時期があった。スクワットは300kgくらいかな。写真あったんだけどな。(重さ300kgで)バーベルが歪んでるから“なんだ力も強いんじゃん”って思ったよ(笑)」

――ゴッチさんは骨格も尋常じゃないですよね。

「力も強いし骨太だよ。触るだけで、ゴリゴリってしてたからね。殴るにしても、受けるにしても最後は骨だろ?」

――ちなみに、ゴッチさんのテクニックはグレコローマンが中心なんですか?

「いや、全部できたよ。グレコもフリースタイルも。当時は俺も嘘だろって思ったけど、チャールズ・イスタスって名前でオリンピックも行ってるだろ?で、チャールズを縮めるとカールだからな。カール・イスタスでカール・ゴッチとなって・・・」

――足関節とかも、ゴッチさんから教わるのですか?

「いや、足関節は“ジャンク・ホールド”だっていってたな。どうしようもなくなって、最後にやるのが足だろ。本当は腕とか首を極めにいく訳だから。アキレス腱固めが18番じゃダメだよ。最後にどうしようもなくなって狙うのがアキレス腱」

――では、藤原さんが当時一番得意だった技はなんですか?

「アキレス腱固めだよ(笑)」

[写真]あのカール・ゴッチがジャンクホールドと称したアキレス腱固め。技を掛けられているのは、総合格闘技イベントZSTで活躍する伊藤健一だ。伊藤は、総合格闘技のリングでアキレス腱固めを得意とする数少ない選手であり、そのルーツは、学生時代に参加した藤原のセミナーにあるという (C)kawazu

――アキレス腱固めがジャンクホールドとは・・・。

「要するにアマレスをやってないし、俺は立ち技が下手だったんだよ。まあ、相撲のコテ投げや腕を取ってから投げとか数種類の技しか知らなかった」

――でも、サバ折りなんかもありましたよね。ディック・フライ戦(1989年11月29日/U-COSMOS)でのテイクダウンは今でも鮮明に覚えています。

「あれは31歳の時、フロリダでゴッチさんに教わった技だ。咄嗟に出たのが決まった」

――また、今の総合格闘技ではレスリングという要素が外せないんですが、当時の新日本ではレスリングの練習なんかもやっていたのですか?

「いや、ほとんど極めっこだよね。でもって、総合と違う。競技ではない勝つ為の技だ。べったり乗っかって相手を動かして疲れさせる。そうなりゃこっちのもんで、極まんないものも極まるだろ?」

――今ですと、5分1ラウンドとかですもんね。

「俺らは、1時間くらいやってたからな。交代で30分ずつとかさ。前田(日明)と30分やって、高田(延彦)と30分やって、その後二人とやって2時間のスパー。でも、それはUWFの辺りかな。マットの色で膝と肘が真っ青になっちゃって、洗っても落ちねーんだよ。本当に元気だったな(笑)」

[次号に続く]

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