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松井秀喜、強い気持ちが呼んだ必然のMVP(2ページ目)

ヤンキースの松井秀喜がやってくれた。ワールドシリーズという夢舞台で、日本人としては初めてMVP(最優秀選手)に輝いたのだ。少々遠回りをした感はあるが、強い気持ちが呼び込んだ結果でもあった。

瀬戸口 仁

執筆者:瀬戸口 仁

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少し遠回りをしたが、夢を実現

松井秀の勇姿を見るにつけ、2つの思いが甦る。1つは、「願いは叶う」ということ。巨人で日本一になった翌日の2002年11月1日、「何を言っても裏切り者になる」とだけ言ってメジャー挑戦を表明し、海を渡った。その不退転の決意からヤンキースのユニホームを着たのは、間違いなくワールドシリーズ出場に最も近いチームと思ったから。

「ワールドシリーズに出たい」「世界一になりたい」という願いがあればこそ、巨人ファンから裏切り者扱いされようが、「命を賭ける」とまで言い切ってヤンキース入りしたのだ。少し遠回りをした感はあるが、願い続けた先に夢の実現が待っていた。

強い気持ちが呼び込んだプラスの流れ

もう1つは「強い気持ちを持つ大切さ」だ。06年5月11日のレッドソックス戦、1回の守備で左手首を骨折した。連続試合出場記録が日米通算1768試合で途切れた瞬間だった。56試合連続安打というアンタッチャブルな大記録を持つヤンキースのジョー・ディマジオが「ディマジオを見るのが最初で最後の人が必ずいる。その人のためにプレーしているんだ」との言葉に感動した巨人・長島茂雄監督(当時)が、入団まもない松井秀に同じ言葉を贈った。この時点から連続試合出場に誇りを持ち、最大目標にしていただけに、左手首骨折による戦線離脱のショックは計り知れなかった。

そして、07年に右ひざ手術、08年は左ひざ手術と3年連続でアクシデントに襲われた。完璧なる逆境。頭の中がマイナス思考で充満しても不思議ではなかった。ところが、松井秀は人間ができている。

「ケガは悪いことばかりではないんです。“このままでは終われない”“もっと凄い選手になって戻ってみせる”という強い気持ちがエネルギーとなるんですよ」

逆境をバネにして、プラス思考に転じてしまう。強い気持ちを持つことで、さらなる精神的なたくましさを身につけてしまうのだ。

願いは叶った。強い気持ちからぶれない心を手に入れた松井秀。来季の契約問題はまだ未定だが、ヤンキースに残留しようが、他チームのユニホームを着ようが、スケールアップしたゴジラが見られることは間違いない。

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