結論
「女子選手がプロ野球で通用するか」。この問いに対して、結論は厳しいものにならざるを得ない。その中で、わずかな可能性を探すとすれば、やはり「水原勇気的な存在」の投手ということになるだろう。すなわち、「変則派で魔球持ち」ということだ。
水島新司の『野球狂の詩』で登場した水原勇気は、左腕アンダースローで「ドリームボール」という変化球を持つ。起用も主にワンポイント的なリリーフであり、いわゆる先発・完投・本格派の投手ではない。女子野球選手の中で、最もリアリティのある可能性を考えたという意味で、やはりこの漫画の示唆するところは大きい。
同体格でも9割の能力--この1割の性差を女性が男性の中で埋めるのは難しい。そもそも、まともな体力が問われる他の球技や競技で男女混合でプレーするものはない。もし男性プレーヤーの中で活躍する女性プレーヤーが現れれば、それは夢のようなことではあるが、あまりにも現実味が薄く、あり得ないことと捉えるのが無難だろうと思える。
女子野球のこれから
なぜこのような命題を考えなければならないかという背景の一つに、女子野球選手のプレー環境が不足しているという問題がある。小学校・中学校ぐらいまでは、女子選手も男子選手に混じってプレーしていいだろう。
実際問題、小学生のリーグでは、女子の方が成長が早いために、全国大会で活躍するエースピッチャーもいる。そして中学野球部ぐらいまでなら女子選手も男子の中で通用することもある。
しかし高校野球になると、公式戦出場禁止という面から、女子選手のプレー環境はかなり狭くなってしまう。この「高校生女子が公式戦に出場できない」という規則は、性差を考慮すれば妥当なところだが、ただ現実に普通の高校野球部で男子に混じるしかプレー環境のない女子には酷な話だ。
それゆえ、女子の硬式野球ができる環境はもう少し充実させてもいいだろう。そのためにはまず、あまりにもすそ野が広すぎる男子野球とは切り離して考え、男子選手の中に女子選手が添え物的に入ることをあまりよしとしない前提を共有すべきだろう。野球以外に、そんなスポーツはないのだから。
男子野球は男子野球、女子野球は女子野球でーーそして女子野球が発展するためには、日米の歴史上で何回か存在した、女子プロ野球の独立チームを作るのも一つの方法だろう。すなわち、一人の女子NPB選手よりも、多くの「女子プロ野球」の選手を作る方がまだ、女子野球界が目指すべき道としては健全なように思えるのだ。