見逃せない「高地順化」と「グラウンド外の環境」
日本代表がキャンプを張ったジョージの施設は、申し分のない環境だった |
「冬」の影響については、大会前から様々な意見がかわされていた。なかでも有力だったのは、「暑さによる消耗が少ないので、走れるチームが有利になる」というものだっただろう。日本が上位に躍進するならば、そこにはきっと走り勝つ姿があるはずだ、と語られていた(残念ながら、根拠は乏しいものだったのだが)。
日本はそのとおりに走り負けなかった。4年前のドイツ大会のような痛ましい消耗はなく、連戦のなかでもフィジカルコンディションを保つことができた。とはいえ、走ることのできた理由を「冬のW杯」だけに求めたら、事実を見誤る。「高地順化」と「グラウンド外の環境」も、キーワードに加えるべきだろう。
サッカー界全体で「高地のW杯」を克服
今大会で日本が勝利を奪ったカメルーンとデンマークは、コンディションが明らかに悪かった。絶対的な活動量が少ないし、動きにキレがないのだ。カメルーンは黒人選手特有のしなやかさを、デンマークは瞬間的な速さや強さを欠いていた。コンディションの調整がうまくいかなかったのは明らかだった。決勝トーナメント1回戦で対戦したパラグアイも、日本国内のテストマッチで来日したときと同じような状態だった。彼らもまた、コンディションはいまひとつだったと僕はみている。ひるがえって日本は、事前合宿地のスイスから高地順化に取り組み、南アフリカ入り後もコンディション作りを成功させた。若年層や女子も含めた世界大会の経験を応用し、サッカー界全体で「高地のW杯」を克服したと言うことができる。