岩政大樹の投入で多様なオプション選択が可能に
DFでは岩政大樹が最後の一枠を射止めた。鹿島アントラーズの堅陣を担う彼は、中澤佑二と田中マルクス闘莉王に続くセンターバックの3番手という位置づけである。長身選手とのマッチアップを避けられないW杯で、187センチの高さは魅力的だ。彼のメンバー入りにより、闘莉王を前線にあげて岩政を最終ラインへ起用するといった様々なオプションが可能となる。石川直宏は選出してほしかった
8人が選ばれたMFは、3月バーレーン戦のメンバー7人に、同試合をケガで欠場した中村憲剛を加えた顔ぶれである。ペナルティエリア付近で決定的な崩しのできる香川真司や、スピードと決定力を兼備する石川直宏は落選となった。好調な清水エスパルスを牽引する小野伸二の復帰もならなかった。小野はメンバー入りにふさわしい実力の持ち主で、今季から復帰したJリーグでも存在感は際立っていた。小笠原満男も同様である。ただ、彼らのような実力者が揃ってベンチに控える状況は、チームバランスという観点から必ずしもメリットばかりではない。岡田監督が「うまい選手を上から選べばいいわけではない」と話していた理由もそこにあり、チーム結成からの積み重ね=雰囲気を指揮官は優先したのだろう。
あえて注文をつけるなら、石川を選んでほしかった。日本代表の布陣を、3月バーレーン戦と同じ4-2-3-1と想定する。「3の右サイド」は中村俊輔で、中央は本田圭佑(または中村憲剛)だ。左サイドは候補者が多い。松井大輔、岡崎慎司、大久保嘉人の起用が想定され、玉田圭司や中村憲を当てはめることも可能である。候補者が多いうえに、タイプ的に似通った選手が少なくないのだ。ならば、途中交代のカードとして、スピードのある石川を加えても良かったのではないかと思う。
矢野貴章、キーパーソンになり得るか―
前線では矢野貴章が小さな驚きの対象である。ここにきてクローズアップされてきた長身ストライカーでは、前田遼一や平山相太らが先行すると予想されていたからだ。前田は11節終了時のJリーグで得点ランキング2位の6ゴールをあげているが、矢野はここまでノーゴールである。そうしたなかで矢野がピックアップされたのは、185センチの高さと身体能力が評価されてのことだ。長身FWは得点力だけでなく、守りのセットプレーでも欠かせない。攻守両面においてチームに高さをプラスできる彼は、グループステージ突破への密かなキーパーソンとなるかもしれない。
「サプライズ」に期待するのもそこそこに
1998年のフランスW杯直前にカズが落選したことで、メンバー発表にはサプライズが付きまとうと思われがちである。だが、大会直前のサプライズは、チーム内に大きな変化が生じることを意味する。話題性にはつながるが、いつでもプラスに作用するわけではないのだ。一体感をもたらすベテランとしての川口を加え、高さというオプションとしての矢野をピックアップした今回の選考は、悪くないものだったと個人的には思う。あとはもう、どれだけしっかりとした準備ができるかである。4月のセルビア戦で失った自信を取り戻すために、5月24日の韓国戦(ホーム)は何としても勝たなければならない。
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