物足りなさを感じる原因は……
こちらが核心へ踏み込んでも、ゾノさんは逃げなかった。「ううーん」とか「そうだねえ……」と言いながら、彼はゆっくりと、何とかとして答えを探していた。自分の気持ちを伝えようとしてくれた。だとすれば、拍子抜けするような思いを抱くのは、僕自身に原因があるのではないか。そんな考えに行き着いたのは、3度目の取材を終えたときである。
前園ほどの選手が力を発揮できずに現役を終えたのだから、そこには我々の想像できない真実や、隠された事実があるはずだ──僕を含めたサッカーファンや関係者の多くは、彼の引退に触れてまずそう思ったはずである。落差の激しいキャリアだったからこそ、びっくりするようなストーリーが展開されていた、と決めつけていた人が多いのではないだろうか。もちろん僕もそのひとりで、だからこそ物足りなさを感じたのだった。