安く買い、高く売るという思惑
千葉サポーターからすれば、阿部の移籍は是が非でもやめてもらいたいのが本音である。フロントも残留交渉を行っていたように、叶うならば阿部に残ってもらいたかっただろう。しかし、フロントからすれば選手は最高値で売れる時に売りたいし、若手が育てばベテランと入れ替えてベテランを放出したいといった考えがあるだろう。また、ベテランに対して活躍に見合った年俸を払えない時には、契約したくても出来ないというケースもある。阿部は完全に売り手市場であり、これが数年後になればまた話も違ってくるだろう。浦和は移籍金のほぼ満額を出すと言ってきているのだから、千葉のフロントからすれば放出するケースでは最高の状況と言える。キャプテンの流出は戦力的に痛手かもしれないが、資金の流入を考えるともしかしたらホクホク顔かもしれない。
千葉は阿部の他にも、「隊長」こと坂本將貴が新潟へ移籍することが決まっている。坂本が務めるサイドは右には昨年のヤマザキナビスコカップMVPの水野晃樹が、左サイドには日本代表のイビチャ・オシム監督が千葉時代にいつも基準としている山岸智といった若手が成長してきた。そして、チームの若返り化のために出場機会が減ると言われたことが坂本の移籍の原因となった。
そもそも千葉には年俸の高い選手や極端なベテラン選手がいない。それは一時は経営難に陥ったクラブであるように、浦和や名古屋、横浜FMのように財政的に余裕はない。それだけに選手を安く買い、高く売るという循環が必要なのだ。そういった計画的なやりくりが今回の2人の移籍の背景にある。