先制点は44分
過度の暑さとスリッピーなピッチが災いしたのか、前半の日本はリズムに乗り切れなかった。大柄なスロバキアがゴール前に引いて手堅く守ってきたことで、中盤も思うようなボール回しができない。中村はスピードある玉田に長いボールを出そうと試みるが、これも相手に止められてしまった。決定機といえば、前半16分に福西からのスルーパスを受けた鈴木がフリーになった場面くらい。日本にとってはモヤモヤする展開が続いた。この流れを打ち破ったのが前半44分の先制点だった。左CKのチャンス。キッカーはもちろん中村。彼の鋭いボールを頭で合わせたのが福西だった。「それまでいい形でヘディングさせてもらえなかったんで、どうすればいいか考えた。で、叩きつければいいと咄嗟に思って、実際にそうした」と福西は言う。彼の冷静な判断から貴重なゴールが生まれた。
坪井が負傷
迎えた後半。日本にとって痛い出来事が起きる。開始早々の2分、坪井が相手選手にはじき飛ばされ、芝とトラックの間に足を引っ掛けて負傷。そのまま動けなくなった。結局、彼はタンカで運ばれ退場。左足ハムストリングの肉離れと見られ、アジアカップ出場がかなり微妙になってしまった。代役で3バックに入った田中誠(磐田)が宮本らといい連携を見せたのは前向きな材料だった。セットプレーの失点に課題残る
しかし日本は20分、セットプレーからスロバキアに同点ゴールを奪われてしまう。宮本がマークについていたバブニッチとの競り合いに勝てず、やすやすと得点を許してしまったのだ。「身長の高い相手には、いいタイミングでジャンプして、ヘッドを防がないといけないのに、今日はそのあたりがうまくいかなかった」とキャプテンは反省しきり。身長176cmの宮本が高さのあるFWをいかに封じるか。これはアジアカップ、ワールドカップ予選に向けて、真剣に考えていかなければならないテーマといえそうだ。この日の日本がよかったのは、この同点ゴールでメゲなかったこと。失点から2分後には2点目をゲット。再び優位に立ったのだ。始まりは三都主の速いリスタート。中村へボールが渡り、彼は振り向きざまに鈴木へスルーパスを送った。そして鈴木はドリブルで持ち込んで、相手GKを浮かせる技ありのシュートを決めたのだ。中村と鈴木が一緒にプレーする機会はトルシエジャパン時代から通算してもそう多くなかった。彼らに玉田を加えた新たな攻撃陣が結果を出したことは、この日の収穫だった。その後、暑さと疲労からスロバキアの運動量が激減。途中出場の柳沢敦がGKのミスを突いて3点目を奪い、完全に勝負を決めた。
坪井の離脱、セットプレーからの失点という不安材料はあったが、鈴木が久保の穴をキッチリと埋め、中村を中心とした攻撃陣が後半からうまく機能した。コンディションが上がってくれば、もっといい形は増えるだろう。このまま連携を強化し、アジアカップ連覇を実現してほしい。
(取材・文/元川悦子)
●ジーコ監督の試合後コメント
●FW・GK選手の試合後コメント
●DF・MF選手の試合後コメント