文章:橋本 誠(All About「アート・美術展」旧ガイド)
「巨匠で見るアート」シリーズ第6回。今回は、アンリ・マティスとパブロ・ピカソの2名の作家の作品を通して、20世紀初頭の大きな絵画運動であるフォーヴィスムとキュビスムについてご紹介したいと思います。
強烈な色彩により純粋な絵画世界を追求したフォーヴィスム
『マティスを追いかけて 』ジェームズ・モーガン著 マティスらフォーヴィスムの作家は見るものにとらわれず、原色などを用いて自身の思うままに表現した |
アンリ・マティス(1869-1954)の作品は、原色が多く用いられ描かれる形が単純化されています。様々な作品を見慣れている私たちにとっては特別な印象をあまり受けないものかもしれませんが、それまで何かしらの形で目に見えるものをより豊かに表現しようとしてきた絵画の歴史の中では、マティスのように見えた色や形にとらわれない自由な表現を行ったフォーヴィスムの画家たちの作品は驚くべきものでした。
前回ご紹介した印象派や後期印象派の作風も、目に見える光を表現しようとしている点においては写実的なものです。20世紀の絵画運動は、それまで様々な形で試みられてきた写実表現を捨て、主観的な試みに基づいたものであると言うことができるでしょう。
マティスが自らの作品について語った言葉に「私は女性を創造しているのではなく、絵を描いているのだ」というものがあります。自分の目で見た女性を描いているわけではなく、画面の中で表現する試みの結果として女性を描いているというわけです。
ちなみに「フォーヴィスム」の語源ですが、マティスらの作品は見た目にとらわれず派手な原色をふんだんに使っていたため、当初は「野獣(フォーヴ)」と揶揄されており、そのうち「フォーヴィスム」と呼ばれるようになっていったそうです。
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フォーヴィスムの画家たち
マティスをはじめ、最初に「フォーヴ」と揶揄されたのは、1905年に開催された「サロン・ドートンヌ」というサロンの1室に集められた作品でした。ここに飾られていたのはマティスのほかに、アンドレ・ドラン(1880-1954)、ジョルジュ・ルオー(1871-1958)などの作品がありました。
ドランはマティスと共にフォーヴィスムの運動において指導的役割を果たした画家で、点描に近い技法を用いた風景画から、キュビスム風の静物画まで幅広い作風の作品を残しています。
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ルオーはパリの美術学校でマティス、ドランと共に学んでいたためにフォーヴィスムの画家に分類されがちですが、特定の流派とは一線を画した作風で、独自の作品を追求していたと言えます。
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