「光」を求めて屋外へ
先のページでご紹介したように、印象派の画家たちは「もの」そのものではなく、実際に私たちが見ている、物体に反射した光を描くことに情熱を燃やしていました。したがって、樹木や水面にうつろう光などを好み、明るい太陽のもとで制作していました。実はここで重要になってくるのが、19世紀半ばに開発されたチューブ入りの絵具の存在です。それまでは顔料を油で溶いて、パレットで調合して使用していたために、一度に持ち運ぶことのできる絵具の量や種類に限界がありました。よって、印象派以前の画家たちは屋外でスケッチを行うことはあっても、仕上げを行うのはアトリエだったのです。
チューブ絵具は、簡単にたくさんの色数を持ち運ぶことができますので、屋外での制作を重視する印象派にとっては欠かせないものとなりました。チューブ絵具の発明あってこそ、印象派が台頭したと考えることもできるでしょう。
印象派の画家たち
オーギュスト・ルノワール《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏場》1874年 |
ルノワールは印象派の画家には珍しく、人や、人のいる風景を好んで描きました。特に有名なのはモンマルトルにあるダンスホールでの舞踏会の光景を描いた作品《ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏場》。画面の中には、印象派に見られる明るい色彩や細かい筆づかいと共に、都会の華やかな雰囲気を見出すことができます。
ドガ《ダンス教室》1873-75年 |
このように、ひと口に印象派と言っても、それぞれが個性的な展開をしているのがこの様式の特徴であり、個人の時代とも言える近代の始まりらしい美術様式だと言うことができるでしょう。
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