文章:橋本 誠(All About「アート・美術展」旧ガイド)
「巨匠で見るアート」シリーズ第5回。今回は、日本でも人気の高い印象派の画家クロード・モネや、後期印象派の画家ポール・セザンヌをご紹介します。印象派は、前回ご紹介したクールベやマネが実践した「現実の世界を如何に描くか」といった試みをさらに追求した表現だと言えるでしょう。後期印象派は、それをさらに応用した様式だと言えます。
モネと印象派
《印象、日の出》1872年 |
※最初の正式名称は「画家、彫刻家、版画家などによる共同出資会社の第1回展」と言い、印象派だけの展覧会ではなかった。
きちんと描かれているのは地平線近くに昇る朝日と手前の船のシルエットだけであり、あとは荒っぽいタッチで色もいい加減に塗られたように見えることから、当時は「仕上げられていない描きかけの絵」だと酷評されたそうです。
確かにこの絵には仕上げという細かい作業は存在せず、スケッチの段階にとどまっているように見えます。しかし、モネには具体的な事物を説明的に描くのではなく、目に映った光景を素早く描きとり、変化し続ける光と雰囲気の印象を豊かに表現するという意図がありました。
《睡蓮》1903年 |
モネは人物であれ風景であれ「もの」を緻密に表現するのではなく、「もの」に反射した光を色彩として捉え、絵具をあえて混ぜ合わせず様々に重ねたりすることで複雑な光景を表現することができると考えたのです。これが印象派の基本的な考え方でした。
次のページでは、印象派の画家にとって欠かせなかったものをご紹介します!