自分の“身の丈”とは?
<DATA>タイトル:『静かにしなさい、でないと』出版社:集英社著者:朝倉かすみ価格:1,470円(税込) |
でも北欧っぽいインテリアにしたいと思っても、ベッドしか買えない。お金がないから。〈わたしたちの身の丈はガリバーみたいに巨大なのに、平均よりも低い背丈の者として生活している。納得できない。解決もできない。だが、このうえもなく穏やかだ〉。
自分の内側から見た“身の丈”と、外側から見た“身の丈”の乖離。その状態を〈このうえもなく穏やか〉と書いているところに驚いた。その後〈わたしたち〉が、〈なんとなく断然素敵〉なロハスにはまっていく展開も可笑しい。ロハス本を読んでおぼえたパラダイムシフトという単語が、思いもよらぬ、けれどもぴったりの用いられ方をするラストも。
ギリシア神話のパンドラの箱から出てきたのは、病気、盗み、ねたみ、憎しみといったネガティブなものだ。この短編集から飛びだすものも、見方によってはそうかもしれない。登場人物のほとんどは、9号サイズを無理やり着ている13号サイズのひとみたいだ。イタい。だけど、既製サイズを押しつけてくる世界に、一矢報いようとしている。こころのなかでは、自分の身丈をどう見積もろうと自由。そう思うと、確かに〈このうえもなく穏やかだ〉。