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宮下奈都『遠くの声に耳を澄ませて』を読む

2007年、長編『スコーレNo.4』が「王様のブランチ」などで紹介されてスマッシュヒットした期待の新鋭、宮下奈都の旅に出たくなる短編集『遠くの声に耳を澄ませて』をご紹介します。

石井 千湖

石井 千湖

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2007年、長編『スコーレNo.4』が「王様のブランチ」などで紹介されてスマッシュヒットした期待の新鋭、宮下奈都の旅に出たくなる短編集『遠くの声に耳を澄ませて』をご紹介します。

旅をテーマにした12編

遠くの声に耳を澄ませて
<DATA>タイトル:『遠くの声に耳を澄ませて』出版社:新潮社著者:宮下奈都価格:1,470円(税込)
本書に収められた短編は雑誌「旅」に掲載されたもの。だから、何らかの形で旅を描いている。

見たことがないのに懐かしい風景を届ける祖父の宝物「アンデスの声」、恋人にふられたばかりのときに女友達からの突然の電話で碧い海にいざなわれる「転がる小石」、旅する男に縁がある主人公が旅と旅行のちがいに思いをはせる「どこにでも猫がいる」など、12編を収録。

どちらかというと目立たない、生真面目な人たちの日常と、感情の揺らぎを丁寧に描いていく。主人公のなかで滞っていた何かが動きだす瞬間に、肩凝りがほぐれるような気持ちよさを感じる短編集だ。各編の登場人物がゆるやかにつながっているのも愉しい。

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