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宮部みゆきの不思議百物語『おそろし』(2ページ目)

All About人気作家ランキング第1位。宮部みゆきの最新刊『おそろし 三島屋変調百物語事始』が7月30日に発売予定。真夏にぴったりのおそろしくも切ない物語だ。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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物語が人と人をつなぐ!

おそろし  三島屋変調百物語事始
<DATA>タイトル:『おそろし 三島屋変調百物語事始』出版社:角川書店著者:宮部みゆき価格:1,785円(税込)
伊兵衛は不思議な物語を知っている者を人づてに集め、一人ずつ、「黒白の間」に話しに来てくれるように依頼する。「変わり百物語」の会を開こうというのだ。

聞き手はおちか。伊兵衛は他人の話を聞くことで、心を閉ざしたおちかに変化が起こるかもしれないと考えた。客人が語る「変わり百物語」を聞くうちに、おちか自身に起こった出来事も少しずつ明らかになる。話を聞くのは「黒白の間」だが、

何が白で何が黒かということは、実はとても曖昧なのだよ

という伊兵衛のせりふからもうかがえるように、人間の白黒つけがたいグレーソーンが描かれている。

一話一話が「百物語」として面白いのはもちろんのこと、罪の意識や大切な人を失った悲しみを抱える人たちが、おちかに物語ることでつながっていくところが印象的だ。犯罪の加害者の家族や不慮の死をとげた奉公人など、真面目に生きているにもかかわらず災難に遭遇してしまった人々に対する思いやりが深いところ。やりきれない事件が起こる一方で、人間の善なる部分を支えるようなキャラクターが登場するところは、いつもの宮部みゆき。安心して読める1冊だ。

【関連リンク】
「宮部みゆき著作リスト」…宮部みゆきの著作をリストにしてみました。

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