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第139回直木賞候補作その2(2ページ目)

第139回直木賞の候補作、新野剛志『あぽやん』と山本兼一『千両花嫁―とびきり屋見立て帖』をご紹介! その職業だからこそ遭遇する事件+αの工夫が読みどころの2冊だ。

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

話題の本ガイド

山本兼一『千両花嫁―とびきり屋見立て帖』

千両花嫁―とびきり屋見立て帖
<DATA>タイトル:『千両花嫁―とびきり屋見立て帖』出版社:文藝春秋価格:1,700円(税込)
『千両花嫁―とびきり屋見立て帖』は幕末の京都が舞台だ。主人公は三条で道具を商う「とびきり屋」を開いたばかりの真之介と、その妻・ゆず。ゆずは京でも指折りの茶道具商「からふね屋」の愛娘で、真之介は番頭だった。ふたりは駆け落ちして所帯を持ったのである。

こちらも『あぽやん』と同じく連作。「とびきり屋」の周囲で起こる事件と、ゆずの実家「からふね屋」との軋轢、そして捨て子だった真之介の出生の謎を軸に展開していく。この若夫婦、それぞれに能力がある。夫は人の目利き、妻は物の目利き。なおかつ、ふたりとも度胸があって、新撰組や坂本龍馬、高杉晋作などと渡り合う。

はんなりとした京ことばで話すゆずが芹沢鴨をやり込める場面(「千両花嫁」)、真之介がやはり芹沢鴨に一世一代の大勝負を挑む場面(「目利き一万両」)は痛快だ。人情話に時代を動かした人物を密接に絡ませている点が読みどころの1冊。

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