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夫婦の絆を見直したくなる5冊(4ページ目)

結婚10周年を迎えたばかりのガイドが、夫婦の恋愛問題を描いた本、「こんな夫婦になりたい!」と思えるオススメ夫婦本をご紹介します!

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

話題の本ガイド

妻にとことん惚れぬいた人城山三郎『そうか、もう君はいないのか』

そうか、もう君はいないのか
<DATA>タイトル:『そうか、もう君はいないのか』出版社:新潮社著者:城山三郎価格:1,260円(税込)
ときどき自慢めいた口調で浮気話を披露する男性がいますが、一人の女性に惚れぬいている男性の方が魅力的だと思います。『そうか、もう君はいないのか』は昨年亡くなった経済小説の大家・城山三郎の遺稿をまとめたもの。愛妻の回想記です。

昭和26年の早春。一橋大学の学生だった城山さんは、実家のある名古屋の図書館の前で容子さんと出会いました。規定の休館日でもないのに図書館が閉まっていたおかげで、2人は話をしながら一緒に街を歩き、惹かれあうものを感じます。馴れ初めからして実にロマンティックです。容子さんの父に交際を禁じられいったんは離れ離れになりますが、城山さんが大学卒業後実家に戻ってきたことで再会し、結婚。それから46年後、容子さんが亡くなるまでの日々が綴られています。

新婚旅行のとき、野性の猿と並んで同じ角度に顔を向ける容子さん。夫の小説のためにナポレオンについての講義を聞き、眠気と戦いながらノートをとる容子さん。夫が講演で緊張していると、客席で「シェー」のポーズをしてみせる容子さん。その明るさは、死病を患っても変わりません。体の不調が続き、精密検査を受けた容子さん。城山さんが緊張しながら結果の報告を待っていると、なんと鼻唄が聞こえてきます。

 私なども知っているポピュラーなメロディに自分の歌詞を乗せて、容子は唄っていた。「ガン、ガン、ガンちゃん ガンたらららら……」 癌が呆れるような明るい唄声であった。

おかげで城山さんはつらい質問をせずにすんだのだそう。明るく唄う容子さんを「大丈夫だ、大丈夫。おれがついてる」と抱きしめる城山さんも素晴らしい。

こんな夫婦になりたい! 妻へのイチオシ本は次ページに。

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