病みつき度ナンバーワン!岸本佐知子ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』
<DATA>タイトル:『灯台守の話』出版社:白水社著者:ジャネット・ウィンターソン訳:岸本佐知子価格:2,100円(税込) |
中でも昨年の10月に出た『灯台守の話』は初心者にもオススメ。まず、白水社のサイトで冒頭を読んでみてほしい。
〈わたしの体は銀と海賊とでできている〉という不思議な一文ですぐに物語に引き寄せられるし、〈海になぶられ、岩に噛まれ、砂にがれた貝殻みたいな町〉ソルツや、崖に斜めに突き刺さった家といった舞台設定もいい。母を失ったシルバーは、盲目の灯台守ピューに引き取られるのだが、最初の夜の食事の描写がまたおいしそう。
その最初の夜、ピューは闇の中でソーセージを焼いた。いや、闇といっしょにソーセージを焼いた。その闇には味があった。それがその夜の食事だった。ソーセージと、闇と。
ピューは夜毎にソルツの町の有名人バベル・ダークの話をしてくれる。裕福な商人の家に生まれたが、牧師になった男。彼の恋と謎めいた生涯を……。そんなに厚くない本だし、読みづらくもないが、ガイドはすぐに読み終わるのが勿体なくて、一週間かけてじっくり読んだ。
昔、夢中になった児童文学のように胸苦しくなる懐かしさと、今まで想像もしたことがなかったイメージが頭の中に広がる驚き。両方が味わえる。
翻訳家には名エッセイストが多し! 自分に合う翻訳家が見つけられる本は次ページに。