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村上春樹から出発!翻訳ショート・トリップ(3ページ目)

新訳『ティファニーで朝食を』が話題の村上春樹から出発! 翻訳家を軸に海外文学の魅力を探るショート・トリップ。

病みつき度ナンバーワン!岸本佐知子ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』

灯台守の話
<DATA>タイトル:『灯台守の話』出版社:白水社著者:ジャネット・ウィンターソン訳:岸本佐知子価格:2,100円(税込)
北村薫、川上弘美、恩田陸、三浦しをん、道尾秀介などなど。プロの作家にも読者が多い翻訳家が岸本佐知子だ。ミルハウザーもそうだが、岸本訳の海外文学の共通点を一言であらわすと“変”。「yom yom 5号」の特集タイトルも「岸本佐知子のヘンな部屋」だった。“変だけど”じゃなく、“変だから”チャーミングという感じの作品ばかり。

中でも昨年の10月に出た『灯台守の話』は初心者にもオススメ。まず、白水社のサイトで冒頭を読んでみてほしい。

〈わたしの体は銀と海賊とでできている〉という不思議な一文ですぐに物語に引き寄せられるし、〈海になぶられ、岩に噛まれ、砂にがれた貝殻みたいな町〉ソルツや、崖に斜めに突き刺さった家といった舞台設定もいい。母を失ったシルバーは、盲目の灯台守ピューに引き取られるのだが、最初の夜の食事の描写がまたおいしそう。

その最初の夜、ピューは闇の中でソーセージを焼いた。いや、闇といっしょにソーセージを焼いた。その闇には味があった。それがその夜の食事だった。ソーセージと、闇と。

ピューは夜毎にソルツの町の有名人バベル・ダークの話をしてくれる。裕福な商人の家に生まれたが、牧師になった男。彼の恋と謎めいた生涯を……。そんなに厚くない本だし、読みづらくもないが、ガイドはすぐに読み終わるのが勿体なくて、一週間かけてじっくり読んだ。

昔、夢中になった児童文学のように胸苦しくなる懐かしさと、今まで想像もしたことがなかったイメージが頭の中に広がる驚き。両方が味わえる。

翻訳家には名エッセイストが多し! 自分に合う翻訳家が見つけられる本は次ページに。

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