水曜日はエロスを忘れないことで若返るウラジーミル・ナボコフ『ロリータ』
世界文学の最高傑作と呼ばれるナボコフの代表作。若島正訳でイマドキの女の子らしくなったロリータも魅力的。 |
主人公のハンバート・ハンバートにはある性癖がありました。大人の目を盗んで、好きな女の子の身体に触れようとするときの震えと恍惚感。その感覚を中年になっても忘れられなくて、9歳から14歳の少女しか愛せないのです。彼は下宿先の12歳の娘・ドロレス(ロリータは愛称)に、鮮烈な性の目覚めを共有した初恋の少女の面影を重ねますが……。
ドロレスの名前が載っているだけで学校の名簿ですら美しい詩に思え、気まぐれで膝の上に乗られたら狂喜乱舞。でも一生懸命歓心を買おうとしても、なかなか相手にされない。ハンバートは空回りしっぱなし。その滑稽な姿は笑えると同時に切なくもあります。
それから、この作品で圧倒されるのは文章です。特にドロレスをはじめ、少女たちの肢体の魅力を描写する文章がすごい。直接的なセックス描写はほとんどないのにエロティック。読めば何気ない日常からも官能を感じる力がアップしそうです。
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タイトル:『ロリータ』
出版社:新潮社
著者:ウラジーミル・ナボコフ
価格:900円(税込)
木曜日はこんな風に年をとりたいと思わされる自伝をどうぞ。