天才との関係を爽やかに描く
第一部のサブタイトルは「イチニツイテ」。スター選手である兄・健一に追いつけない自分に限界を感じ、サッカーをやめた新二。彼が高校に進学して、陸上の面白さに目覚めるまでを描く |
ボールなんてなけりゃ、おまえ、もっと速いのに
という一言が、新二を変える。特にスポーツが強いというわけでもない公立高校に進学した新二は連を走らせるため、一緒に陸上部に入るのだ。もともとの身体能力が、かなりの部分を左右する短距離走の世界。そこで新たな可能性を見出した新二は、いつしか走ることの面白さに目覚めるが……。
新二の周囲には、普通なら滅多にいない天才がふたりもいる。最も身近な兄・健一と幼なじみの連。ふたりとの関係が物語に陰影を与えている。だが、映画「アマデウス」のように天才への嫉妬が憎悪に変わったりはしない。新二は兄を尊敬しているし、連を見ても心の中に生まれるのは「こんな風に走りたい」という純粋な想いだ。また、漫画『スラムダンク』の流川のように飄々とした天才、連のキャラクターもいい。
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