■真に家族を思うとは?家族とは?「問い続けること」を物語に昇華
本作においては、加賀が「なぜそれを知ったか」が物語の主軸にすわる「謎」である。同時に、この謎そのものが、本作のテーマである。
昭夫、八重子が息子である直巳の罪をかばうために行ったことが「愛」なのか、それともある人物が加賀に対して行ったことが「愛」なのか――
読み終わった後、物語の余韻ととともに、真に家族を思うとはどういうことなのか、何度も何度も胸に問いかけてしまう。
もちろん、著者はけっしてその問いかけの「答え」を提示しているのではない。問いかけることそのものを物語として昇華させているのだ。これぞ、東野作品の魅力の真髄。ぜひご一読を。
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ジャンルという枠組みに囚われない著者ですが、ミステリーというジャンル自体もいろいろな意味で変化しています。情報チェックは「ミステリ・エンタメ作品を読む」で
直木賞の受賞は、6度めの正直、でしたね。相性が悪かったというか、なんというか。彼に関連する賞としては・・・
デビューは、この賞。昭和60年に『放課後』で江戸川乱歩賞を受賞。ミステリー作家の登竜門として、名門中の名門とも言える賞で、桐野夏生、真保裕一、福井晴敏ら、そうそうたる人気作家が受賞者に名を連ねています。受賞作は、「e―hon 江戸川乱歩賞受賞作紹介」でチェック。
直木賞受賞作となった『容疑者Xの献身』は、ミステリの書き手が投票で選ぶというユニークな賞である「本格ミステリ大賞」も受賞。ちなみに、この年の評論部門の受賞者は、北村薫が受賞。
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