直木賞受賞後初の短編。息子が犯した罪。その時、父親は・・・家族の意味を問う問題作 『赤い指』 ・東野圭吾(著) ・価格:1575円(税込) |
■直木賞受賞後初の長編。「家族」をテーマにした本作、おなじみ加賀刑事も登場。犯人探し型ミステリーの枠を超え・・・
『容疑者Xの献身』によって直木賞作家になった著者の受賞後第一作。トリックを主体とした「ミステリー」というジャンルに属する作品が同賞を受賞することは稀だなどと言われたのだが、本作を読むと、改めて、著者の作品がすでに「東野ミステリー」、いや、「東野圭吾」という一つのジャンルになっているのを感じる。
さて、物語は・・・
照明器具メーカーに前原昭夫は、ある日、「とんでもないことが起こった」という妻からの電話を受け、急ぎ帰宅の途につく。家で待つのは、妻の八重子、中学生の息子・直巳、昭夫の母で老人性痴呆症の症状が出ている政恵。そして、幼女の死体・・・。殺したのは、直巳らしい。
事態に動転すると同時に、直巳のいじめ体験、幼女趣味疑惑、母の病、母と妻の確執などなど、「家族」を重荷と考え、問題から避けることだけを考えて日々をやり過ごしてきた自身を振り返り、暗澹たる思いに沈む昭夫。妻の八重子は、そんな彼を責め、自分はどんなことをしても直巳をかばうと強弁。そんな妻の言い分を聞いているうちに、昭夫の脳裏にはあるアイデアが浮かぶ。だがそれはあまりに邪悪なアイデアだった・・・。
事件の「謎」解明にあたるのは、『卒業』『悪意』など東野作品ではおなじみの加賀刑事。今回もその慧眼で真相を突き止めるわけだが、すでにお気づきの通り、本作は、「犯人探し」型のミステリーではない。読者は、早い段階で真相を知らされているのだから。本作の「謎」は、「誰が犯人か」にはないのだ。それでは、謎はどこにあるのか。