■本格医療ミステリをコミックのノリで楽しめる!新人離れした「エンタメ力」に瞠目!
本作がコミック世代にも大いに支持されそうな「キャラ立ち」小説であることとだ。
ロジックのお化けにして、仕事にたまごっち持参の白鳥!撚れて拠れまくって、曲がりくねって一回転して戻ってきてしまいそうな発想、予想のつかない突飛な行動・・・すべてにおいて、強烈!
「変人」×「医者」という組み合わせですぐ思い出すのが、トンデモ精神科医・伊良部が暴走する奥田英朗の『イン・ザ・プール』、『空中ブランコ』。白鳥は、「変人」×「役人」で、伊良部とはちょっと趣は異なるものの、「暴走力」という意味ではいい勝負だろう。
それにしても、完成度の高い作品である。本格医療ドラマ×コメディー、緻密なディテールの組み立て×全体を「ポジ」「ネガ」に分ける大胆な構成力といった、異なる要素をラクラクと物語の中に取り込んでいる。
純文学系の新人賞は、ポテンシャル、エンターテインメント系の即戦力――
図式的と批判されることを恐れずにいうなら、つくづくそう思った。
最後にひとつだけ、倣岸のそしりを覚悟しつつ、栄えある受賞者に注文を。
「即戦力」な分、どうか、どうか、小さくまとまらないでほしい。
できれば、ご自身のフィールドである「医療」以外の他流でも闘っていただきたい!
とにもかくも、お代を払うだけのことは間違いなくあるプロの作品です。ぜひ!
この本を買いたい!
■やはり、このジャンルは新鋭からして成熟度が高いですね。エンターテインメントであればあるほど、受け手が求めるレベルも高くなるのかも。情報チェックは「ミステリー・エンタメ作品を読む」で
もうすっかりおなじみ「このミス!大賞」。選考結果がネット上で見られるなど、ギャラリーにとってのお楽しみもいっぱい。読み手から書き手になりたい方は、第5回の募集要項をチェックしてみては?
第3回受賞作『果てしなき渇き』の深町秋生のブログ「新人日記」。自作待つ!
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