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第4回「このミス!大賞」大賞受賞作。先進医療技術を扱った現役医師による医療ミステリー。クセ者キャラが大活躍、エンターテインメント性抜群で読んで損なし! 『チーム・バチスタの栄光』 ・海堂尊(著) ・価格:1680円(税込) この本を買いたい! |
■先進医療・バチスタ手術の術中死。医療過誤?それとも?調査にあたるのは、確信犯的オチコボレ医師と変人役人!
『四日間の奇蹟』でドカンとメジャーになった「このミス!大賞」の大賞受賞作。今回は、12歳の特別賞受賞者(『殺人ピエロの孤島同窓会』)を出して話題を呼んでいるが、賞の「話題性」はあくまで、副次的な産物であったことが、この大賞作を読むと納得できる。
舞台は、大学病院。東城大学医学部付属病院の神経内科教室で万年教師をしている「俺」こと田口は、学生、インターン時代からオチコボレ気味で怠け者。孤高を守っているわけでもないけれど、結果的に権威に無頓着。権力闘争からさっさと離脱し、不定愁訴外来、通称「グチ外来」の主として収まっている。そんな「俺」のもとに、院内政治の実力者たる病院長から、内々の命令が下る。
その命令とは、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術における術中死に関すること。東城大学医学部付属病院では、アメリカにおいて同手術の成果を挙げた医師・桐生を招聘、専門チーム「チーム・バチスタ」を作り、次々に成功を収めていたのだが、三例続けて術中死が発生。おりしも、マスコミが注目している海外からのゲリラ少年兵士の手術が予定されているのだ。術中死の真相によっては、病院の「体面」に多大な影響を与えることになる。しかも、執刀医である桐生自身が「失敗」に不審な思いを抱いているのだ。医療過誤?それとも故意の殺人?さまざまな思惑が絡み、成功しても失敗しても「オイシイ」ところのない真相解明に白羽の矢が立ってしまったのが「俺」だったというわけだ。
しぶしぶチームの面々の聞き取り調査を始めた「俺」の前に、事態をよりややこしくさせる存在が現れる。厚生労働省の役人にして、超・変人の白鳥。彼の奇妙なロジックと型破りな「捜査方法」に閉口する俺だが・・・
医師である著者による本格的な医療ミステリー。最先端の医療技術や大学病院内の政治的闘争、医療過誤の問題など、切実で今日的なモティーフが専門知識を駆使してガッツリと描きこまれ、読む者を飽きさせない。しかも、本作には、「医師が書いた医療ミステリー」ならではの精緻で硬質な魅力以外にもうひとつ、強烈な魅力がある。それは・・・