この本は、おふくろの本。だから、できれば、雑に扱ってほしくない。その願いを込めて、装丁も・・・
――おかあさまが亡くなられたあと、あるいは、この本を書いた後、リリーさんの心のうちには、それ以前と比較して、当然、大きな変化がおありだと思いますが、お仕事上など、その変化が具体的な現れてきた、というようなことはありますか?
リリー そうですね。おふくろを亡くした後、はじめてした仕事が、「おでんくん」という絵本を手がけることだったんです。この作品がそうだったように、オレが絵本を書く、というのも、意外に思った人は多かったでしょうね。でも、先ほどもいったように、母の死によって、子どもたちに何か伝えたいという心の動きが生まれたことは、自然なことだったように思う。この作品を書き終える前と後と、と言う点については、そうだな、やっぱり、少し肩の荷が下りたような気はしてます。
――それは、やはり、執筆するということが苦しかったら?
リリー それもあるでしょうけど、この作品は、ある意味、おふくろの法要のつもりで書いたものだから。もちろん、おふくろに対するいろんな思いが、これで終ってしまう、ということはないんだけど、法要がやっと終った、という感じでしょうか。この本の印税で墓を建てようと思っています。おふくろは、きっと「そんなのいらない」というだろうけど、自分にとっては、この本で得たいくばくかの金銭の使い道は、それくらいしか想像できないから。
――この作品は、リリーさんにとって、ほんとうにすべての意味で「お母様の本」なんですね。
リリー そうですね。さっきも言ったように、本を買っていただいたら、それはもう、その人の持ち物だから、どう扱われようと、何もいえた筋合いではないんだけど、自分にとっては、この本は、おふくろの本だから、できれば、雑に扱ってほしくないという希望はあります。この本は、装丁も、挿画も、撮影も、すべて自分でやったんですが、雑に扱うと、すぐに汚くなってしまうような、白地にして、紙も脂がつきやすい、デリケートなものにしたのは、そういう思いを込めたんです。ほら、オバチャンが、捨てることのできなくて、役に立たないかもしれないのに、ずっと置いておく、洋菓子やの綺麗なパッケージがあるじゃないですか。そういうものをイメージしました。
――お話を聞いていて、この本を読んで、なんだか、生身のリリーさんご本人と出逢ったような気になった理由がわかる気にしました。本日は、どうもありがとうございました。
この本を買いたい!
◆お母様の死後、絵本を書いたリリーさん。いい絵本は、いつ読んでも、何歳になっても・・・情報チェックは「子どもと読書を楽しむためのページ」で
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