■現代人が抱える「分裂」に気づかせてくれる詩。その力を心のどこかで求めている
私が、もし、その島に赴いたとして、その奇跡に気づかないのではないかと思う。
以前、谷川俊太郎さんにインタビューした際、彼は、こんなことを仰っていた。
「今は、いわゆるデジタルな世の中。すべてのものを分割して、整理して、分析して、理解することにみんなが一生懸命。でも、詩というのは、それと正反対で、分割され、分裂しているものを結びつけようという働きのあるものだと思う」
現代の日本人の多くにとって、おそらく、太陽が沈む時間が、「一日の終わり」ではない。そのことも、彼の言う分裂のひとつだろう。谷川さんは、かぎりなく平明で、かぎりなく研ぎ澄まされた言葉で、その「分裂」を私たちに気づかせてくれる。
『あさ/朝』が大きな反響を得たのは、私たちが心のどこかで、彼の言葉の力、詩の力を求めているからだろう。
■奇跡的に美しいプリンスエドワード島の朝・夕。その美しさは遠くても・・・
『あさ/朝』『ゆう/夕』の2冊を読んだ方の多くは、きっと、次の日、朝の空を、夕の空を、見あげることだろう。その空は、この2冊に映し出されたプリンスエドワード島の空とは比べ物にはならないくらい小さくて、透明感に欠けたものかもしれない。その空に、捧げる言葉など、何ひとつ思い浮かばないかもしれない。
だが、「朝」がちゃんと「朝」だった、「夕」が、ちゃんと「夕」だった頃は誰にでもあるはずだ。空を見上げることで、そんな頃の記憶に出会うことができるのではないだろうか。プリンスエドワード島に旅するのは無理でも、それも立派な旅なのだと思う。
多忙な年の瀬、走り続けている人にこそ、できれば手にしてほしいセットだ。
この本を買いたい!
子どもと一緒に過ごす時間が増えるこの季節。「読んであげる」のもいいけれど、どうせなら、一緒に楽しみたい!情報チェックは「子どもと一緒に本を楽しむ」で。
◆『あさ/朝』『ゆう/夕』静かな話題を読んでいるビジュアルブックに関連するページはこちら。◆
『あさ/朝』に収録されている「朝のリレー」を使ったCMに関するページ「おはようネスカフェ」。寝顔フォトコンテストのお知らせのほか、スクリーンセーバーなども。
現代日本を代表する詩人・谷川俊太郎のファンページ。「空の嘘」。彼の詩を3ヵ月ごとに2作品紹介。初出詩集の案内などもあります。
プリンスエドワード島(赤毛のアンでおなじみですよね)はじめアトランティック・カナダを撮り続ける写真家・吉村和敏氏。彼のホームページ「Kaz Home」では、彼のスケジュールのほか、携帯電話の壁紙配信なども。
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