収録された谷川俊太郎の詩がTVCMに使われるなど、話題に。絵本としても詩集としても楽しめるビジュアルブック |
『あさ/朝』『ゆう/夕』
・谷川俊太郎(ぶん・詩)吉村和敏(写真)
・価格:全2冊セット2730円(税込)各1365円(税込)
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■懐かしい!収録作『朝のリレー』がTVCMに使われ話題に。流行に流されず輝き続ける言葉たちに満ちたビジュアルブック
右から開くと、書き下ろしの絵本、左から開くと、谷川さんが今まで発表してきた詩の中から“朝”“夕”をモティーフにしたものを厳選した詩集。
現代日本を代表する詩人・谷川俊太郎と、プリンスエドワード島を撮り続けている写真家・吉村和敏のコラボレーションによって生まれたビジュアルブック『あさ/朝』『ゆう/夕』。第一弾である『あさ/朝』に掲載された「朝のリレー」がTVCMにも起用される大好評を博した。実は、この詩、教科書に載っていたこともあり、少なからず人の郷愁を呼び起こすのではないだろうか。
その一遍を少しだけ・・・
カムチャッカの若者が
きりんの夢をみているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が
ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は
柱頭を染める朝陽にウインクする
(略)
ぼくらは朝をリレーするのだ
(後略)
ミニマムにして、壮大。詩人の透徹した視線の凄みを実感せずにいられない。
一過性の流行などというものとまったく別の次元で、輝き続ける言葉というものは、やはりあると実感せずにはいられない。
■第二弾『ゆう/夕』の帯の言葉にぎくり。夕焼けをじっくり眺めたのっていつですか?
さて、この『あさ/朝』の好評に押されて形で発刊されたのが、『ゆう/夕』である。私は、この一冊を書店で見かけたとき、まず帯に記された言葉にギクリとさせられた。
ゆうやけのうつくしさを よろこんでいるだろうか
あしたがくるのをたのしみにしているだろうか――
右開きの絵本の方の後書きに谷川俊太郎さんが書かれた文章からの抜粋であるが、こう問いかけらえて、私と同様、多くの人がこう思われるのではないだろうか。
ゆうやけが美しいと思うかどうか以前に、ゆうやけをちゃんと眺めたことって、あんまりないよなぁ
ベッドの中であしたの予定を反芻することはあっても、純粋な気持で「楽しみ」にしたことって、あんまりないよいなぁ。
ビルの中のオフィスで、夕方になったのも知らずにパソコンに向き合い、くれないに染まる空よりも手帳に書かれた次の予定を確認するのに忙しく、一日の終わりに街の空を見上げれば、そこには、煌々と輝く人工の灯りたち・・・私を含め、都会で生きる多くの人々は、おそらく、そんな日々を繰り返しているだろう。
都会は、ゆうやけを知らずに夜になり、夜が来たのもしらずに、人口の灯りに照らされ続けて朝を迎える。
私たちは、あきらかに自然が刻む時のそれとは異なるリズムの中で、日々を生きている。
そして、そのことに気づかないほど、慣れきっている。
この本に収められた吉村和敏さんが、写したプリンスエドワード島の風景は、ほんとうに奇跡的なほどに美しい。だが・・・