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この作家に大注目! 『さくらインテリーズ』(2ページ目)

「インテリ、自業自得型ホームレスたちが遭遇する、あまりに壮絶な現実。度肝を抜く展開と、ブラックな笑いに満ちたエスカレート・ノベル。いま、もっとも熱い書き手の最新作。

執筆者:梅村 千恵

■「社会性」の裏にある安い現実。スプラッタなノリで独自の「リアル」

 この作品では、遺物捏造事件を起こした考古学者が重要な役割を担う。
 著者の最近の作品は、刑務所を舞台にした『燃えよ!刑務所』某乳業会社の事件を連想させる『牛乳アンタッチャブル』など、社会性のある設定のものが少なくない。
 もちろん、どの作品も、ドキュメンタリーなタッチとは極にあるかなりスプラッタなノリの作品である。
 それは、著者が、賢げなキャスターや識者たちが、眉をひそめながら大真面目に伝えるニュースの高尚な社会性の裏側にある、笑うしかないような安い現実を見据えているからだと思う。
 その安さを力強く表現しようとすると、こういうスプラッタなノリになるのだろう。

 とにもかくも、絵にかいたように小心な考古学者・藤守が、若者たちのトーク番組を見て、「俺は、たった一人で日本中を騙しとおせた男だ!」といきなり強気になり、「嘘ッこ発掘ドキュメント」を企画して、笑いも泣きもできるタレントに成り上がる(もちろん、そのままで終わらないのだが)展開は、最高だ。

■ヤマもオチも無視して、ひたすらエスカレート!「イイ話」に飽きた人はぜひ!

 さて、最近、エンターテインメント文学の世界では、著者と同年代の作家たちが、高い評価を得ている。
 石田衣良、片山恭一、ヒキタクニオ、東野圭吾・・・。
 それぞれに個性的なのであるが、共通項は、「巧い」ことである。展開がスムーズで、ハメのはずし方も巧い。だから、安心して読める。たとえ、ラストは、悲惨でも、読後感的には、概ね「イイ話」にまとまる。良質なエンタメ作品の条件であろう。
 その点、この庁舎の作品は、まったくまとまらない。
ヤマもオチも関係なく、ひたすらにエスカレート、ハメは一度外したら、戻ってこない。
 もしかして、ノリだけでかいていて、読者、無視している? 
とまで思う。

 それが、うーん、
快感なのだ。
 穿った見方をすれば、読者に阿らない、とでも言うべきか。

 いや、そんなことはともかく、面白い。このスピード感、度肝ぬく展開。この無遠慮さ。「イイ話」に少々飽きた人は、ぜひ、ご一読あれ。

この本を買いたい!


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