『桜インテリーズ』
この本を買いたい!
■自業自得、自称インテリ・ホームレスのジェットコースター・ストーリー
今回は、私が、個人的に、プッシュ作家の最新作を紹介したいと思う。
その人は、戸梶圭太。
1968年生まれ。自称ミュジシャンを経て、1998年に『闇の楽園』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。『溺れる魚』、『なぎら☆ツイスター』、『燃えよ!刑務所』、『ドクター・ハンナ』など、スピード感あふれる展開、ブラックな笑いに満ちた作品を発表している。
さて、彼の最新作だが、主人公は、ホームレス。
買春で人生を棒に降った元・中学生教師高木、同じく買春が新聞沙汰になり役所を辞めた山根、遺物捏造で悪名を馳せた元・考古学者、藤守、会社の金を着服して女に貢いでいたことがバレ、会社を追われた元サラリーマン安藤、本の返却が遅れた女性にしつこくつきまとって、職を失った図書館司書、鳥越。
北新宿さくら児童公園に集まったホームレス5人。リーダー格の?木は、自分たちを、「さくらインテリーズ」と名づけている。ホームレスのルールを守り、平和に暮らしていたはずなのだが・・・。
いきなり根城に滲入していきた心神喪失の巨体の男を半殺しの目にあわせ、しかも、その家族を騙して美味い汁を吸おうとしたことから、5人は、大トラブルに巻きこまれる。結果、山根・安藤が、あっさり死に、残った3人も寝床を失うはめに。
文字通り、何の但し書きもないスカンピンになった?木、藤守、鳥越の3人は、
「農業を学んで、自立しよう」という、一見まともそうな謳い文句に釣られ、他のホームレスたちとともに集団農場行きのバスに乗ることに。
ところが、その「集団農場」の正体たるや、トンデモないものだった!
■胸もすかないし、心も温まらない。だが・・・
この先の展開は、ホームレスたちが一発逆転する爽快な話でもないし、家族の愛で更正する心あたたまる話でもない。
それどころか、人は、あっさり殺されるし、人体解剖はするし、あげくは、2011年の「道ばたに死体はあふれているが、ゴミひとつ落ちていない」新宿で、主人公は、なんと人肉を喰っている。
笑えるのだが、救いはない。グロいし、エグイ。
イカンでしょう。こういうのを、将来を担う若人たちに読ませちゃあ・・・。
と、私の良識らしきものが言うのだが、いかんせん!圧倒的に面白いのである。
単なるキワものに収まらない魅力があるのであるのである(著者ご本人は、「単なるキワもので結構!」と思ってらっしゃるかもしれないが)。