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このミステリーで今夜は眠れない<第2回> 『終戦のローレライ

『亡国のイージス』など国防をテーマにした大作で知られる福井晴敏の最新作。第二次世界大戦末期、「秘密兵器」をめぐる潜水艦の死闘を通じ、戦争の意味と現代日本のあり方の問う。

執筆者:梅村 千恵


『終戦のローレライ』(上・下)

福井晴敏 講談社 上/1700円 下/1900円 
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■ドイツ潜水艦が日本海軍に託した「秘密兵器」の正体は?奪取せんとする男の企む「国家の切腹」とは?

ローレライ――その美しい歌声で、ライン川を往く船人たちを惑わし、川底へと誘う美しき魔性の乙女。

本作に登場する“彼女”は、ライン川でなく大海原にいる。それも、無明の闇がどこまでも続く海の底深くに。また、彼女が誘うのは、日々の営みのために櫂をこぐ船人ではない。国家の存亡を賭けて死闘を繰り広げる巨大潜水艦だ。
そして、彼女の無垢なる歌声は、潜水艦を、その乗組員たちを、そして、国家を、どこへ行き着くのか?

日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞をトリプル受賞『亡国のイージス』以来、5年。国家の防衛という困難なテーマに挑み続ける福井晴敏、待望の最新作。

時は、第二次世界大戦末期。敗色濃厚なドイツのある潜水艦「シーゴースト」は、米潜水艦との死闘の末、“あるもの”を海底深くに遺し、退却する。それは、やがて、ナチスドイツから日本海軍へと託される。
いまや「伊507」と名前を変えた「シーゴースト」は、一癖も二癖もある軍の「規格外品」たちを乗せ、「秘密兵器」回収の任に就くのだった。

「伊507」には人間魚雷として特攻命令を待っていた17歳の若者が使命の内容を何ひとつ知らされない乗船していた。その1人、17歳の折笠征人は、乗組員達の中で最初に「秘密兵器」と接遇することになる。海底で彼が聞いたのは・・・
(カンのいい読者なら「みなまで言うな!」というところであろう)。

ともあれ、無事に「秘密兵器」回収の任を果たした「伊507」。しかし、それは、「伊507」の、折笠の、そして、「秘密兵器」の、壮絶にして複雑な戦いの幕開けにすぎなかった。
敵国・アメリカの背後にいたのは、なんと、日本海軍の大佐にしてこの計画を密かに推進してきた浅倉だったのだ。

彼は言う。「大日本帝国の国家としての切腹を断行する」――
その恐るべき内容とは?
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