■普遍であるがゆえに料理しにくいテーマに直球勝負!あの彼女のダンナは意外に・・・
時代に翻弄されざるを得ない人の人生に普遍なる「意味」はあるのか。
ひとときも止ることなく流れゆくときの中で、人が人を「愛」することに「真実」や「永遠」があるのか。
著者は、『さらば海峡の光』『白仏』など、その一連の作品の中で、頑固なまでに愚直に、普遍的であるがゆえに料理しにくいテーマ、ややもすれば、陳腐に流れ、もっと俗な言い方をすれば、「ダサイ」テーマと真正面から対峙してきた。
ハヤリものと思われがちな『冷静と情熱と間』も例外ではない。
そう意味では、創作者としての辻仁成は、イメージとは裏腹に、不器用なまでに剛直な人なのではないかと私は思っている。
それが、辻仁成という作家の特異性であり、最大の魅力なのだ。
さて、本作。
著者の作品にありがちなセンチメンタルさが少々鼻にもつく部分も少なからずある。だが、それでも、終幕近く、ハワイで遭遇した「あるもの」とともに、主人公が空と海の境目を舞うシーンは、やはり、感動的であるという言葉がもっともふさわしい。
愛とは?人生とは?答えは、空と海の間で霧散するものであっても、問う姿そのものこそが、たったひとつの「真実」なのかもしれない。そう思わせてくれる。
できることなら、多くの方に、先入観を留保して読んでいただきたい。少なくとも、「辻仁成」=「中山美穂のダンナ」ではなくなるはずだ。
★あえて、アラ、捜します!
センチメンタリズム、甘さ。それもこの著者の作品の魅力でもあると理解はしているのですが、それにしても、亡くなった妻が主人公に白昼夢的に語りかけるシーン、ちょっと安直な気が・・・。
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