『臨機応答・変問自在』『臨機応答・変問自在2』
森博嗣 集英社新書 680円、720円
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■質問内容で成績評価。単位を取るのは意外に大変そうだけど・・・
「何か質問はありませんか?」――授業の最後にそう問い掛ける先生は、全国の大学に数限りなく存在するだろう。多くの場合(退屈な時間からの解放の合図、学生からすれば、まあ、「質問は」くらいまで講義室に残っていればいいところ、なのだが、名古屋方面の某国立大学工学部助教授・森先生の講義室の場合は、そうはいかない。人気ミステリ作家でもある森先生は、その質問によって出席をとり、成績をつけるのだ。学生のタームを使うなら、「単位がもらえる」か「もらえないか」が決まるわけである。真っ当な質問をしようとすれば授業もそれなりに気合を入れて聴かねばならず、気骨が折れるといえば折れるだろう。だが、森先生が一つ一つの質問へすべて答え、それがプリントされ配布されるとなると、彼の授業を履修する立場にないファンにとっては、かなり、妬ましい。「オレにも質問させろ」「私にも」となったらしく(おそらく)、質疑応答は講義室を飛び出し、インターネット上に。理系学生vs森助教授のQ&Aからユニークなものを抽出し編集した『臨機応答・変問自在』、一般から広く質問を公募した『臨機応答・変問自在2』からいくつかの質問をピックアップしてみると・・・。
「空飛ぶヒーローは何故みんなマントをつけているのですか」(学生)「先生、生きてて何になるんですか?」(同)「人間の指はどうして5本あるのか」(同)「サーチライトって、何を探しているんですか」(高校生)「犬の鼻は何でできていると思いますか?」(会社員)
と、まあ、こんな調子で、本書は、知識を深めるための助けになるとか、雑学ネタが拾えるといった、実用的なQ&A集ではない(もちろん、そういう質問も散在はしているが)。また、第一集における大学生の発するあまりにも幼稚な質問に「学力の低下」を嘆く向きもあろうが、それを世に訴える目的で作られたのでもない。ファンにとっては、時として人を喰ったような著者の答えに、彼独特の「匂い」を嗅ぎ取れるという魅力もあることはあるのだが、こちらもそれを目的で作られたのではない。となると・・・
「先生はどうしてこんなつまらない本を出版するのですか」――
第一集の冒頭に挙げられたこの質問、著者の答えは、立ち読みでもチェックできるから触れないことにして、2冊とも、全然、つまらなくないのである。
どのあたりが?うーん・・・。森先生のように論理的で当意即妙な答は出せそうもないのだが、この本の魅力を私なりに分析してみた。